少量の血液でアルツハイマーを診断する

鈴木邦義(ペンネーム)

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米国で開発された測定機器を用いてアルツハイマー病の予測や早期発見が可能とする研究結果についてご紹介します。

アルツハイマー型認知症を効率よく診断するには?

認知症の病型の1つとして、アルツハイマー型認知症があります。現在日本で認知症を引き起こす原因として最も割合が多く、6割以上がアルツハイマー型であるとされています。65歳以上の人のうち、割合として10人に1人が、アルツハイマー型認知症であるとされており、また年々増加傾向にあります。

アルツハイマー型認知症は必ずしも高齢者がかかる病気ではなく、アルツハイマー型認知症の5%に当たる人が、「若年性アルツハイマー」といって、60歳以下で発症しています。高齢者のみでなく若者にも起こりうるアルツハイマー型認知症ですが、その原因として、脳内にアミロドβという物質が蓄積し神経細胞の死を引き起こすことと関連していることが分かってきています。

アルツハイマー型認知症は、進行性の病気で、記憶障害が著しく生じ、発症すると家族だけの介護では負担が大きく、日常生活が困難になる場合もあります。アルツハイマー型認知症は、まだ治癒することはできない病気ですが、進行を遅らせることは可能です。そのため、簡単な検査で早期に発見することは非常に大切です。

p-tauタンパク質がアルツハイマー型認知症の診断に有用

今回、アルツハイマー型認知症を迅速かつ正確に診断できるという方法が開発できたという研究をご紹介致します。

過去のアルツハイマー型認知症の研究から、アルツハイマー病を診断するのに、脳脊髄液(髄液)バイオマーカーのうちのコア・バイオマーカーと呼ばれるAβ42(アミロイドβタンパク質)、t-tau(総タウタンパク質)、p-tau(リン酸化タウタンパク質)が有用であることはすてに判明しています。

しかし、髄液検査におけるバイオマーカーでは患者に負担がかかりことと手間がかかることが問題でした。髄液検査をするには背中に針を刺して髄液を採取しなければならず、負担が大きいため、実際の臨床現場ではあまり用いられてはいません。

2015年にt-tauを血液で定量できるシステムは報告されましたが、その後の検討において、血液中のt-tauでは精度の高い診断には使えないことが明らかになりました。そして最近になって、t-tauタンパク質ではなくp-tauタンパク質を定量するシステムが開発されました。

今回の研究は、米国で開発された高い精度がある測定機器を使用し、目的とするタンパク質をとらえるための免疫物質や試薬の検討を行い、結果として微量の血液からp-tauを検出する方法を開発したとの報告です。

研究内容としては、60歳以上のアルツハイマー型認知症患者20人と、認知症症状が出ていない15人の血液中にあるp-tauを測定したところ、アルツハイマー型認知症患者では正常対照者と比べてp-tauが有意に増えていて、それがアルツハイマー型認知症の診断に有用であることが確認されました。

アルツハイマー型認知症と関連する物質としてはアミロイドβが有名であり、実際に発症10年以上前から蓄積することが知られています。しかし、蓄積が始まってから発症するまで長期的過ぎるため、効果的な診断指標にはなりませんでした。

その点、p-tau(リン酸化タウタンパク)は、認知症発症がより近づいてきた時点から蓄積を始め、認知症発症と直接的に関連しているということが分かっています。

今回の研究結果によって、新しい測定機器が臨床的に広く使われるようになれば、より簡単な方法で、アルツハイマー型認知症を早期発見したり、発症を予測したりできる可能性があります。治癒が難しい病気ですので、早期に発症に気づき、進行予防に取り組み始めることは非常に重要なことだと言えるでしょう。

今回ご紹介した論文
Quantification of plasma phosphorylated tau to use as a biomarker for brain Alzheimer pathology: pilot case-control studies including patients with Alzheimer’s disease and down syndrome.
Mol Neurodegener. 2017 Sep 4;12(1):63.
Tatebe H et al.