アリセプトの効果が出やすい人の特徴

鈴木邦義(ペンネーム)

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認知症治療薬の1種であるアリセプトの効果が出やすい人を調査した論文内容についてご紹介します。

アリセプトとは?

アリセプトは、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の症状を抑制する薬として用いられています。認知症治療薬の中でも古くから使用されている実績があり、代表的な認知症治療薬です。

認知症には中核症状と周辺症状があります。周辺症状は、意欲低下、無関心、抑うつといった、単なる物覚えの悪さとは異なる症状ですが、アリセプトはそれらの周辺症状への改善効果もあるとされています。

また、認知症は軽度から高度まで症状の程度に応じて分類されますが、アリセプトはいくつかあるコリンエステラーゼ阻害薬の中で唯一、高度のアルツハイマー型認知症に適応のある薬です。軽度から高度まで適応があるため、同じ薬で継続的に治療を行うことができます。

しかし、アリセプトは全ての人に効果があるわけではありません。これまでの使用例から、約3-4割の人に有効であることが分かっています。つまり、6-7割の人には効果が乏しいということです。

アリセプトが効きやすい人は?

アリセプトが認知症の方全てに効きやすいというわけではないとすると、当然「どういった人に効きやすいのか」という疑問が湧いてきます。

そこで今回、アルツハイマー型認知症に対して、投与前にアリセプトが効果の予測ができるかどうかについて、調査された研究について1報ご紹介いたします。

この研究は、脳の白質(WMC)と呼ばれる場所と重症度に注目して、アリセプトの治療反応を検討したものです。

調査方法は、AD(アルツハイマー型認知症)でアリセプトを投与されている患者418例から、196例を分析対象として抽出しています。治療前にCTスキャンと、Age-Related White Matter Changes Rating Scaleという評価を脳の5つの領域において実施しています。そして、その後毎年にわたってCognitive Abilities Screening Instrument(CASI)という評価を実施して、認知症の状態を確認しました。

結果の概要としては以下の通りです。

まず、人口統計学的データでの有意な差は、治療反応群と非反応群との間にはありませんでした。つまり、両群は統計的に偏っていない、比較しうるということが示されています。

そして、治療反応群と非反応群の頭部の画像所見を比較した際に、治療反応群においては前頭側頭領域の白質の変化が統計学的に有意に少ない、という結果でした。また、大脳基底核の白質の変化は、統計的に有意ではないものの少ない傾向にあるということがわかりました。これを、年齢、性別、教育、アプリポ蛋白E多型、高血圧、糖尿病といった各因子で調整すると、前頭側頭領域・大脳基底核領域両方において、白質の変化があるとアリセプトの効果が出づらいということが統計的に示されました。

今回の報告において、前頭側頭葉および大脳基底核で白質の変化を有する場合は、アリセプトの効果が出づらいことがわかりました。どこに病的変化があるかということが、ADの重症度と関係はなく、AD患者に対するアリセプトの治療効果を左右する可能性があるということが示唆されたものです。

アリセプトは認知症の進行予防において効果が実証されている薬ですが、人によって反応に違いがあります。何剤も同時に試すわけにはいきませんから、治療開始前に治療効果を予測できることは非常に重要なことです。

近年アリセプト以外にも、認知症治療薬は増えてきていますので、今後さらに検討が進むことで個人個人に合った最適な治療戦略が立てられるようになるでしょう。今回の報告が他の薬でも同様な傾向があるのか、アリセプトに特徴的なものなのかはまだわかりませんが、今後の研究結果が気になるところです。

ご紹介した論文
Location of white matter changes and response to donepezil in patients with Alzheimer’s disease: A retrospective and observational study.
Wu MN et al.
Geriatr Gerontol Int. 2017 Aug29.