筋トレが脳を救う!?

工樂真澄

筋トレが認知症に効く?(イメージ)
出典元:pixabay.com

運動能力や機能の衰えは認知症の発症リスクを増大させてしまうことが分かってきました。普段から定期的に筋トレをし筋肉量を増やしておくことが、脳機能の維持や認知症予防につながります。

筋肉が衰えるサルコペニアとは

サルコペニアという言葉をご存じでしょうか。年をとるにつれて筋肉量が低下する症状のことで、ギリシャ語のサルコ(=肉)とペニア(=喪失)という言葉をもとに作られた造語です。年をとれば筋肉が減るのは当たり前のことのように思われがちですが、実はそのメカニズムは明らかになっていません。

近年の研究から、サルコペニアになると認知症を発症するリスクが高まるのではないか、と言われています。

サルコペニアで老化が進む!

2013年に65歳から89歳の方(男性568人、女性1314人)を京都大学が調査したところ、このうちの約20%の人がサルコペニアと診断されました。さらにサルコペニアと診断された人はそうでない人よりも、歩行中などに「転ぶのではないか」と不安に思っている割合が高いことがわかりました。また実際に、転倒しやすいこともわかりました。

筋力が衰えると脚力が弱まり、つまずいたり、転びやすくなったりします。また顕著なのが握力の低下です。転びそうになっても、すぐにどこかへ掴まることができません。危ないので外へ出かけること自体が面倒になってしまい、活動範囲が狭まり、一気に老化が進む要因にもなります。

サルコペニアとフレイル

年をとって身体の機能が低下し、健康を害しやすい状態をフレイル(虚弱という意味)と言います。フレイルは体重の減少や、疲労、衰弱、歩行速度の低下などから診断されますが、そのほとんどのケースで筋力が低下しており、同時にサルコペニアとも診断されます。

メキシコの国立サルバトール・ツビラン医学栄養研究所のアビラ・フネス博士らは、フランスに住む65歳から95歳までの5480人について、1999年から7年間の縦断的研究を行い、フレイルと「脳血管性認知症」の発症との関連性を明らかにしました。

認知症にはいくつかタイプがありますが、「脳血管性認知症」は脳梗塞などの脳の血管障害がもとで起こります。

調査期間中に脳血管性認知症を発症した人について、同時にフレイルであるかどうかを調査しました。関連性を相対的に示す数値(ハザード比)で表すと、フレイルでない人を1としたときに、フレイルの症状を示す人は2.73となり、フレイルに陥っている人は脳血管性認知症になりやすいことが明らかになりました。

その原因として、フレイルでは心臓血管の障害を起こしやすいことがわかっており、おそらく動脈硬化や脳梗塞の危険性も高くなるためではないかと考えられます。フレイルはこのタイプだけでなく、認知症の中でも最も割合の高いアルツハイマー型の認知症にもなりやすいことが、シカゴにあるラッシュ大学のブッハマン博士らが2007年に発表した研究から明らかになっています。

この調査からもわかるように、運動能力や機能の衰えは認知症の発症リスクを増大させてしまうと考えられるのです。

筋トレが認知症予防に

日常的なウォーキングや水泳など体を動かすことは、血圧の改善や肥満の予防だけでなく、認知症の予防にも有効であることが知られています。しかし筋力が衰えてしまっては、このような運動を続けることができません。

将来的にフレイル、またはサルコペニアに陥らないようにするには、若いうちから筋肉量を増やしておくことが大切です。手軽にできるのはスクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操などの筋肉に適度な負荷を与えるレジスタンス運動です。筋肉を増やすためには、負荷をかけた後、数日間は筋肉を休ませて回復を待ちましょう。そのためレジスタンス運動は毎日ではなく、週に2、3回、継続して行うのが理想的です。

筋肉は一朝一夕では作ることはできませんから、少しずつ筋トレをしてサルコペニア予防を心がけましょう。そしてその心がけが認知症の予防にもつながるのです。

(引用)
Is frailty a prodromal stage of vascular dementia? Results from the Three-City Study.
Avila-Funes J. A. et al. J Am Geriatr Soc. 2012 Sep;60(9):1708-12. PMID:22985143