孤独は運動で癒せるか?

佐藤洋平

孤独は運動で癒せるか?(イメージ)
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運動は脳に良く、孤独は脳に悪いといわれます。では孤独の脳への悪影響は運動で解消できるのでしょうか? そのことを調べたラットの実験をご紹介します。

孤独と運動どちらに軍配が?

脳は単独で動くコンピュータのようなものではなく、生身のカラダや生身の人間がひしめく社会というものと密接に関わっているようです。

その証拠に脳の機能を改善するためには有酸素運動が大事だという研究が多数なされていますし、さらには孤独な社会環境が脳に様々な悪影響をおよぼす事も数多く報告されています。

つまり脳にとって運動=善、孤独=悪のような図式が成り立つかもしれませんが、はたしてこの善悪が闘った場合、つまり孤独な人間が運動を行ったときには果たしてどちらに軍配が上がるのでしょうか?

今回取り上げる論文は運動が孤独による脳機能の変化にどのような影響を与えるかについて調べたものです。

運動はむしろ悪影響になることも

実験ではラットを家族と過ごさせたり、一匹で隔離したり、運動させたり・運動させなかったりで、ストレスの影響を受けやすい記憶脳(海馬歯状核)の神経細胞がどのように変化するか調べています。

結果、残念なことに運動によっても孤独の脳に対する悪影響を抑えられず、場合によっては運動によってかえって悪影響を増すということもあるようです。

運動によってセロトニンが分泌されるのですが、これは出ればいいというわけではなく、脳内で受け手になる物質があって初めて代謝されて効果が出るわけで、孤独のストレスによってこのセロトニンの受け手(セロトニン受容体)がうまく発現せず、運動効果が現れない、もしくは運動自体のストレスが前面に出て脳に悪影響を及ぼすらしいのです。

ラットの実験であり、人にすぐ当てはまるかはともかく 孤独とはなかなか厄介なもののようです。

【論文要旨】
社会的な孤立によってストレスに起因する心身の不調が増悪されることが知られている。

しかしながら孤立生活に運動のような一般に脳に良い影響を及ぼすものがどのような影響を与えるかについては明らかにされていない。

本研究ではラットを対象に家族で暮らさせ走らせる/家族で暮らさせ走らせない/一匹で暮らさせ走らせる/一匹で暮らさせ走らせないという条件で実験を行い、実験後蛍光染色した海馬歯状核の変化について比較を行った。

結果一匹で暮らしたラットは走らせても走らせなくても海馬歯状核の神経細胞の新生が阻害されていた。

またコルチコステロンの濃度が下がった状態では短期間の走らせる負荷はネガティブな影響がポジティブな影響に変換されるが、一匹で暮らしたラットはそのような効果は見られなかった。

これらの結果から通常脳にとって良いと言われる運動が社会的に孤立した環境では逆の効果を引き起こす可能性が示唆された。

http://www.nature.com/neuro/journal/v9/n4/full/nn1668.html
Nat Neurosci. 2006 Apr;9(4):526-33. Epub 2006 Mar 12.
Social isolation delays the positive effects of running on adult neurogenesis.
Stranahan AM1, Khalil D, Gould E.

出典:脳科学リハビリテーション