認知症予防にはダンスが効果的

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

年をとるにしたがって、脳は構造的にも機能的にも衰えていくものです。来るべき超高齢社会を前に、脳の老化速度を遅らせるための研究が進んでいます。今回は様々な運動の中でも、「ダンス」が老化抑制に効くことを示した研究をご紹介します。

老化による脳の変化

2017年、アメリカのコロラド州立大学Burzynska博士らは、様々な活動が高齢者の脳に与える影響について調べ、結果を発表しました。

年齢の増加によって起こる認知機能や記憶の衰えには、脳の神経細胞の微細な変化が関わっていると考えられています。大脳は表面の「灰白質」と内側の「白質」に大別することができます。灰白質には細胞の「本体」が多く、白質には神経細胞から伸びた「枝」が多く含まれています。「拡散テンソル画像法」は、白質にある神経細胞の枝の向く方向や状態によって、水が拡散する程度が変化することを利用しています。水の拡散の具合は「異方性比率(FA)」によって表され、これが脳の機能を測る指標ともなります。たとえばアルツハイマー型認知症などの脳疾患では、神経細胞の繋がりが減るなどの変化が起こり、FAが低くなるとされます。

研究に参加したのは60歳から79歳までの健康な174人です。被験者はランダムに4つのグループに分けられ、それぞれ異なるトレーニングを行ってもらいました。1つ目のグループはウォーキング、2つ目はダンス、3つ目はウォーキングと栄養指導、そして4つ目は筋トレなどの運動です。トレーニングはプロの指導のもとで1回に1時間程度、週に3回を半年にわたって続けてもらいました。トレーニング期間に入る前と期間終了後に、認知能力測定と脳の構造観察を行い、比較しました。

その結果、半年たった脳ではFAが減少する傾向が強いものの、ダンスを行っていたグループでは、FAがトレーニング前よりも増えていました。認知機能との関係を調べたところ、認知機能テストはどのグループ間でも有意な差はありませんでしたが、ダンスグループでは他のグループに比べて、課題を処理する速度が有意に優っていることがわかりました。

記憶に関係する部分でダンスの効果

脳を21の領域に分けて観察した結果、「脳弓」という部分でとくに、ダンスグループと他のグループとの間に大きな違いがみられました。脳弓は大脳の奥深くにある弓状の構造で、先端には記憶をつかさどる「海馬」がつながっています。脳弓もまた記憶の固定や、記憶を呼び覚ますために重要な役割をしているとされ、脳弓を損傷すると記憶障害につながります。今回の研究で脳弓に違いが見られたことから、ダンスは他の運動よりもこれらの機能を維持する効果が高いと考えられます。

これから始めるならダンスを

適度な運動は血流を促すことで酸素供給が増え、脳の神経細胞にもよい影響を与えます。今回の研究では、ウォーキングや筋トレよりも、ダンスのほうが脳の構造維持に効果的という結果が出ました。これは、ダンスのもつ特性が大きく影響していると考えられます。ダンスは筋力や肺活量、運動能力を鍛える以上に、たくさんの要素を含んでいます。音楽やパートナーに合わせた動きをするための集中力や、美しく見せるための芸術的感覚、または振りを覚える記憶力など、様々な脳の機能を必要とします。ダンスは「動く脳トレ」とも言えるでしょう。年をとっても長く続けられるような趣味をお探しだという方には、ぜひダンスをお勧めしたいと思います。

ご紹介した論文
White Matter Integrity Declined Over 6-Months, but Dance Intervention Improved Integrity of the Fornix of Older Adults.
Burzynska,AZ. et al. Front Aging Neurosci. 2017 Mar 16;9:59.