筋トレで軽度認知障害の症状が改善する可能性

工樂真澄

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運動は体力や筋肉増強の効果だけではなく、認知機能にも良い影響があります。それでは、どんな運動をどれくらい行えばいいのでしょうか。今回は、高齢者の筋トレが軽度認知障害の改善につながることを明らかにした論文をご紹介します。

レジスタンス運動とは

2016年オーストラリア、シドニー大学のMovros博士らのグループは、継続的な筋トレが軽度認知障害の経過にどのように影響するかを調べ、発表しました。研究には55歳以上の軽度認知障害と診断された100人が参加しました。ランダムに分けた2つのグループのうち、片方のグループは「プログレッシブ・レジスタンス・トレーニング」を行ってもらい、もう片方は対照群としてストレッチのみを行ってもらいました。

「プログレッシブ・レジスタンス・トレーニング(PRT)」とは「レジスタンス運動」の一つで、いわゆる筋肉トレーニングのことです。レジスタンスには「抵抗」という意味があり、筋肉に負荷を与えながらトレーニングを行います。1回のトレーニングは60分から100分で、週に2回から3回のトレーニングを半年にわたって行ってもらいました。上半身のトレーニングはジムなどでよく見かける「チェストプレス」と「ボート漕ぎ」、下半身のトレーニングは「レッグプレス」「膝のばし」「ヒップアブダクション」です。

半年のトレーニングの結果、筋トレを行っていた人たちは、対照グループの人たちよりも有意に筋肉の強度が増していました。また、最大酸素摂取量も増えていました。さらに認知機能との関係を調べたところ、筋トレを行った人の47%に認知機能の改善が見られました。さらに詳しく解析したところ、下半身の筋力が強くなった人ほど、認知機能が改善していることがわかりました。この傾向は上半身の筋トレの結果では見られませんでした。

以上の結果から、軽度認知障害の人が継続的に筋トレを行うことで、認知機能が改善することが示唆されました。特に下半身の筋力が関係していることも示唆されました。

どんな運動を行えばよいのか

昨今、トレーニングに勤しんでいる高齢の方を、ジムや公園などでも多くおみかけするようになりました。今回の論文では、ジムにあるような器具を利用して、トレーナーの指導の元でトレーニングを行いました。これらの運動は認知症の初期症状の改善はもちろんのこと、健常な方々の脳にも良い効果があると期待できます。

わざわざジムに行くのが面倒だという方は、簡単なレジスタンス運動が下記の厚生労働省のホームページでもご覧いただけますから、参考にしていただければと思います。ただし、慣れない運動を急に始めると体を痛めたり、ケガをしてしまったりすることもありますから、不安な方はかかりつけのお医者さんやジムトレーナーと相談の上で行ってください。

ご紹介した論文
Mediation of Cognitive Function Improvements by Strength Gains After Resistance Training in Older Adults with Mild Cognitive Impairment: Outcomes of the Study of Mental and Resistance Training.
Mavros Y et al. J Am Geriatr Soc. 2017 Mar;65(3):550-559.

参考サイト
厚生労働省e-ヘルスネット「レジスタンス運動」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/keywords/resistance-exercise