ヨガとマインドフルネスがワーキングメモリーを改善する

工樂真澄

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脳の健康のためにも運動がいいことはわかっているけど、走ったり泳いだりするのはどうも苦手で……という方にぜひお勧めしたいのが「ヨガ」です。今回はヨガのワーキングメモリーへの効果を調べた論文をご紹介します。

ヨガでワーキングメモリーが改善

「記憶力をよくしたい」とは、受験生でなくても多くの人が望むことではないでしょうか。特に40代、50代になって記憶力の衰えを感じるようになる世代には切実な願いです。しかし、そこで無理をして急に激しい運動を行ったり、難しい脳トレのドリルを解いたりしても、なかなか続かないという方もおられるでしょう。できるだけ楽に、かつ効果的な方法で記憶力を改善したいという方には「ヨガ」をお勧めします。

2017年、アメリカのテキサス州立大学のBrunner博士らは、ヨガのワーキングメモリーへの効果を調べた論文を発表しました。研究に参加したのは平均年齢24歳の健康な43人です。彼らには1回60分のヨガのレッスンを週に1回、6週間にわたって行ってもらいました。レッスンの最初の5分は「マインドフルネス」という瞑想を行います。その後、ストレッチやポーズなど呼吸に気を配りながら一連のヨガの訓練を行い、最後の10分間では再びマインドフルネスを行います。トレーニング期間の前と、6週間のトレーニング期間の後で、被験者にはそれぞれワーキングメモリーのテストを行ってもらい、結果を比較しました。

記憶にはいくつか種類があります。「ワーキングメモリー」とは一過的な記憶のことです。買い物に出掛ける前に冷蔵庫を開けて、足りないものをチェックしたときや、交番で道順を尋ねたりしたときなど、長期にわたって覚えておく必要はないけれども、少しの間、脳に留めておく必要のある記憶のことです。ワーキングメモリーの測定は、「短期の記憶を保持する能力」と、「短期の記憶に関連して操作を行う能力」に分けて行われました。例えば、いくつかの数字を聞いた順番に暗唱するのは「短期記憶保持」ですが、聞いた順とは逆に暗唱するのは「短期記憶操作」です。

トレーニング期間前後のテストの成績を比較した結果、トレーニング期間終了後には、ほとんどのワーキングメモリーのテストの成績が向上していることがわかりました。唯一、読み上げた数字を頭の中で並べ替えて小さいものから順に暗唱するテストは、改善しませんでした。しかし、これと似たテストで、数字とアルファベットをランダムに読み上げ、数字を小さいものから順に、またアルファベットはAからZの順に並べ替えて暗唱するというテストでは、トレーニング期間より以前からヨガを行っていた人たちでは成績が有意に向上していました。

以上の結果から、マインドフルネスを含むヨガのレッスンを週に1回程度、数回行うだけでもワーキングメモリーは改善し、さらに長期間継続することで、よりよい結果が得られることが示唆されました。

※ただし、当研究は対照群を設けた研究ではなく十分なエビデンスとは言えません。論文でも「無作為化比較試験及びより包括的な神経心理学バッテリーを利用して、ヨガに関連する認知機能強化の程度およびヨガが認知を高めるメカニズムを理解するためにさらなる研究が必要」と結んでいます。

マインドフルネスから始めてみよう

「マインドフルネス」については以前もnounowの記事で取り上げた通り(マインドフルネス瞑想を体験してみよう!【講習編】)、意識を今ここに集中することによって、脳に良い影響が現れることが知られています。ヨガは単なるストレッチや筋トレではなく、リズムを保って呼吸を行うことで瞑想と同様に脳に良い効果をもたらすと考えられます。今回の実験から、マインドフルネスを取り入れたヨガが認知機能を改善する可能性が示されました。日々、仕事や家事に追われてヨガのレッスンに通う時間さえない、という方は、毎日5分でも呼吸に意識を集中して、脳を「リセット」する時間を取り入れることから始めてみてはいかがでしょうか。

ご紹介した論文
A yoga program for cognitive enhancement.
Brunner D et al. PLoS One. 2017 Aug 4;12(8):e0182366.