パソコンを使った方が認知症予防になる!?

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

高齢者はパソコンが苦手なイメージを持つ人は少なくないかもしれませんが実際には60歳以上高齢者のネット利用は増えているようです。今回は高齢者のコンピューター利用時間が長くなると、海馬の容量が増え、認知症リスクの軽減にも繋がるというアメリカの研究チームが発表した論文をご紹介します。

高齢者のパソコン利用率

高齢者はコンピューターが苦手、インターネットサービスはうまく利用できない、というイメージは過去のこととされています。実際に2015年に総務省によって報告された情報通信白書によると、60歳以上のネット利用率が上昇していることがわかっています。報告の中にある2014年のデータによると、60代は75.2%、70代は50.2%がネットを利用しています。2002年のデータによると、60代では53.1%、70代では26.0%だったので、12年前の調査結果から大きく変化していることがわかります。

60代以上の方のインターネットの利用目的は、ホームページや電子メールの閲覧、金融取引サービス、地図情報サービスが多いことが明らかになっています。

コンピューターの使用時間が短いほど海馬が萎縮している

アメリカの研究チームは、コンピューターの使用時間が短いほど記憶をつかさどる海馬が萎縮し、認知症発症リスクが上がる可能性があることを2016年3月に「Journal of Alzheimer’s Disease」誌に発表しました。

今回の研究では、認知機能障害のない健康な27人の65歳以上の男女を対象にコンピューターの使用時間を記録しました。また、脳の大きさを測定できる画像検査であるMRIを施行し、脳の大きさとコンピューターの使用時間との関連を解析しました。

結果をみてみると1日の平均コンピューター使用時間は51.3分で、自宅におけるコンピューターの使用時間が1日あたり1時間長いと海馬の容積が0.025%大きくなることが明らかになりました。海馬とは、脳の中で記憶をつかさどる場所として知られており、認知症で萎縮することがわかっています。つまり、コンピューターの使用時間が長いほど、海馬の萎縮を防ぐことができ、認知症の発症リスクを低下させる可能性があることを示しています。

今回の結果をふまえて、高齢者における精神機能の低下がコンピューターの使用時間の短縮に影響している可能性があるのではないかと研究グループは考えています。しかし、今回の研究では27人と少ない人数が対象になっているため、今後大規模な研究が行われることが期待されます。研究グループは、引き続き今回対象とした方の追跡調査を行っていくということなので、近い将来コンピューターの使用時間による認知症発症への長期的な影響が明らかになるかもしれません。

ブルーライトの悪影響は大丈夫?

コンピューターを使用するためには、注意、計画、記憶などさまざまな脳の機能を同時に使う必要があるので、脳に刺激になるのかもしれません。今回の研究でも、コンピューターを利用すると認知症発症リスクを下げる可能性があることがわかりましたが、パソコンによる悪影響はないのでしょうか。

パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどから、ブルーライトが出ていると聞いたことがある方も多いかもしれません。ブルーライトは、人間の目で見ることのできる光の中で最も波長が短く、強いエネルギーをもっているといわれています。特に、パソコンやスマートフォンなどのLEDディスプレイや照明などに特に多く含まれていることがわかっています。

現代人の生活に欠かせないブルーライトですが、長時間浴び続けると体に大きな影響を与えます。厚生労働省は、ガイドラインで「1時間のデジタルディスプレイ機器での作業を行った際には、15分程度の休憩を取る」ことを推奨しています。

実際に体にどのような影響が起きるかというと、目の疲れや痛み、睡眠障害、うつ病、肥満、がんを引き起こしやすくなるのではないかと考えられています。医学的な根拠はまだ十分とはいえませんが、長時間のブルーライトによって目への直接障害があるだけでなく、体内リズムを崩す可能性があるためさまざまな疾患の発症リスクを上げるのではないかと推測されています。(http://blue-light.biz/about_bluelight/

高齢者の方にとって、パソコンを利用することは脳の刺激にもなり良い効果がありそうですが、適度な利用時間にする、寝る前の2-3時間は使用しない、などのルールを決めた方がよいかもしれません。

<参考論文・参考資料>
J Alzheimers Dis. 2016;52(2):713-7. doi: 10.3233/JAD-160079.
Less Daily Computer Use is Related to Smaller Hippocampal Volumes in Cognitively Intact Elderly.
Silbert LC, Dodge HH, Lahna D, Promjunyakul NO, Austin D, Mattek N, Erten-Lyons D, Kaye JA.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26967228