ボランティア活動が認知症予防になる可能性

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

昨今、社会貢献意識が高まっていますが、ボランティアが心身に好影響を与えたり認知症予防につながる可能性があるとする研究をご紹介します。

ボランティア活動の体への影響

ボランティア活動とは、自分の意志で社会事業に参加して無償で他者のために行動することをさします。見返りを求めることや強制されて仕方なく活動することなどは、ボランティア活動といえません。

ボランティア活動が身体へ与える影響に関する研究によると、ボランティア活動を行っている人はそうでない人に比べて死亡するリスクを約24%減らすことができたそうです。

詳細なメカニズムは明らかにできていないものの、ボランティア活動によるいくつかの良い効果は指摘されています。例えば、ボランティア活動を行うことは適度な運動になるから良いといわれています。

他には、社会的なつながりの増加、精神的健康の改善などが挙げられています。孤独は認知症やうつ病などのリスクになるので、ボランティア活動を通して他者とのつながりを保てることは良いと考えられます。

また、人を助けると前向きな気持ちになり、自分の能力を認めるとともに、自己の存在を肯定できるようになるといわれています。他者のことを考えると自分の悩みから遠ざかることができ、精神的に健康になります。結果的にストレスの軽減になり、免疫系や内分泌系にも良い影響を与えると考えられています。

高齢者におけるボランティア活動

内閣府が平成24年度に発表した「高齢社会白書」によると、60歳以上の高齢者において過去1年間に何らかのボランティア活動に参加した人は男性で51.5%、女性で43.0%となっています(内閣府「高齢社会白書」:高齢者の社会貢献活動)。

また、同府が行った「社会意識に関する世論調査」によると、60歳以上の高齢者における社会的貢献意識は高まっていることがわかっています。具体的には、20年前は社会への貢献意識を持つ方の割合は46.6%だったことに対し、64.4%まで上昇しています(「社会意識に関する世論調査」:高齢者の生活と社会貢献活動)。

ボランティア活動とひとことで言っても、内容にはさまざまなものがあるため、自身の身体能力や興味で選ぶことができます。例えば、町内会などの地域活動、社会福祉に関する活動、自然や環境保護に関する活動、子どもの安全を守る活動、募金活動、病院で患者をサポートする活動などです。

では、ボランティア活動は高齢者にとってどのような意味があるのでしょうか。高齢者を対象にした研究では、ボランティアをした人はそうでない人に比べて活動量の増加を4-8か月間にわたって認めたことが明らかになっています。

また、実際に脳を観察したところボランティアをした高齢者において6か月間にわたり、認知機能に関わる脳の前頭葉(ぜんとうよう)とよばれる部分が活性化したことがわかっています。

ボランティアが心身に与える良い影響の1つとして運動量の増加が挙げられますが、厚生労働省も高齢者の運動量を増やすために地域のボランティア活動に参加することを推奨しています(厚生労働省:健康日本21)。

ボランティア活動は認知症予防になる

アメリカの研究チームは、60歳以上の高齢者を対象にした研究でボランティア活動が認知症予防になることを2016年11月に「Journal of the American Geriatrics Society」誌に発表しました。

研究チームは、1998年に60歳以上の高齢者13262名に対し、ボランティア活動の有無などについて質問を行いました。平均年齢は71歳でした。研究は2012年まで14年間にわたって行われ、観察期間中におけるボランティア活動への参加の有無と認知症の発症について検討しました。認知症の発症に関しては、記憶力テストで評価しました。

結果を見ると、ボランティアをしたことのある人の方がしていない人に比べて認知症の発症率が低いことがわかりました。ボランティア経験が3回以上ある人の認知症発症率が7.6%であることに対し、2回では14.9%、1回では14.3%、ボランティア経験がない人では17.3%と最も高くなることが明らかになりました。つまり、ボランティア活動をすればするほど認知症のリスクが低くなるということです。今回の研究から、ボランティア活動は認知症の発症を予防する可能性があることがわかりました。

研究の限界として、ボランティア活動に参加する人は、もともと体が健康である可能性は否定できません。しかし、今回の研究は長期にわたってボランティア活動の効果を評価しているため、少なくともボランティア活動をすることは認知症の予防になる可能性は示すことができたといえます。ただし、ボランティア活動の内容や持続期間などの詳細なデータは示されていないので、今後の研究が期待されます。

<参照サイト・参考論文>
第52巻 日本公衛誌 第4号:ボランティア活動が高齢者の心身の健康に及ぼす影響
1) J Am Geriatr Soc. 2016 Nov;64(11):2263-2269. doi: 10.1111/jgs.14398. Epub 2016 Oct 3.
Volunteering Is Associated with Lower Risk of Cognitive Impairment.
Infurna FJ, Okun MA, Grimm KJ.