知的活動がMCIを予防する

鈴木邦義(ペンネーム)

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以前にもnounowで取り上げた高齢者の知的活動がMCIのリスクを軽減する研究についてご紹介します。

軽度認知障害(MCI)

認知症の最大の要因は加齢ですが、高齢になっても手を動かす作業や社会活動を通じて他人とコミュニケーションをはかることで、ボケ防止につとめている方は多いでしょう。

今回は、認知症のはじまりである、軽度認知障害(MCI, Mild Cognitive Impairment)が、高齢期における知的活動によって予防できるのではないかという研究結果についてご紹介致します。

軽度認知障害(MCI)は、健忘型と非健忘型の2種類に分類されます。健忘型軽度認知障害は、記憶力の低下が主で、約束や最近の出来事を忘れるという症状が出るタイプです。非健忘型MCIでは、複雑な手順が必要なことが行えなかったり、計画を立てることができなくなったりするものです。また、軽度認知障害(MCI)の方は、より重度な認知症になるリスクが高いことも分かっています。

高齢者の知的活動は、軽度認知障害(MCI)のリスクを減少させる可能性がある

以前、nounowで取り上げた研究(知的活動は認知症の予防になる)になりますが、米国の研究チームが、高齢者の知的活動が軽度認知機能障害(MCI)の発症にどの程度の影響を及ぼすかを評価しています。試験参加者1929名が、登録して1年以内に行った知的活動に関する質問に回答し、その結果を解析したものです。認知機能の評価は、登録時と、その後15か月ごとに行われています。また、同時に認知症と関連のある物質の1つである、アポリポ蛋白Eε4の値も測定しています。

結果として、約4年に及ぶ観察期間中に試験参加者のうち456名が軽度認知障害(MCI)を発症しました。それらの患者について、年齢、性別、及び教育レベルなどの各臨床因子による調整を行い、知的活動と軽度認知障害(MCI)の関連性を検討したところ、週1,2回以上の知的活動が軽度認知障害リスクの低下と関連するという結果が得られました。

知的活動の種類別には、ゲーム(22%のリスク低下)、工芸作業(28%のリスク低下)、コンピュータの使用(30%のリスク低下)、社会活動(23%のリスク低下)において、軽度認知障害の予防効果が認められたというものです。一方で、日常的に本を読むという行動は、他の活動と比べると、MCIのリスクにあまり影響を与えないという結果が得られました。

特に、健忘型軽度認知障害のリスクを低減させたのは、工芸作業、コンピュータの使用、社会活動であり、非健忘型軽度認知障害のリスクを低減させたのは、コンピュータの使用のみでした。

アポリポ蛋白Eε4が軽度認知障害のリスクになることはすでにわかっていますが、今回の検討においても、もっとも軽度認知障害のリスクが高かったのは、アポリポ蛋白Eε4陽性で、かつ知的活動を行わなかった群でした。

認知症の入り口である軽度認知障害を防ぐために

全ての人は、みな等しく年齢を重ねます。しかし、老化の速度は人それぞれです。ちょっとした物忘れを、「老化だから」とあきらめる必要はないのです。先に述べたように、コンピュータを使っての作業、様々なゲーム、工芸作業、社会活動等の知的活動を行っている人と、これらの活動に一切かかわっていない人とでは、軽度認知障害の発症率に違いが見られました。つまり、知的活動を定期的に行うことで、認知症の発生リスクを下げることができるかもしれないのです。

定年退職をするまで仕事中心の生活を続けてきた人は、すぐに新しい趣味を持とうと思ってもなかなか難しいことがあります。何か1つで良いので、自分の好きな事、長く続けられる様な知的活動を、働き盛りの頃から見つけておくことが、将来の認知症リスクを下げるためにも大切なことです。

もちろん、「知的活動をしているから大丈夫」と高を括っていてはいけません。身体的活動や食事といった他の生活因子が認知症の発症に及ぼす影響も大きく、特に高血圧、糖尿病などの生活習慣病をはじめとした動脈硬化性疾患のコントロールも重要なことは言うまでもありません。

ご紹介した論文
Association Between Mentally Stimulating Activities in Late Life and the Outcome of Incident Mild Cognitive Impairment, With an Analysis of the APOE ε4 Genotype.
JAMA Neurol. 2017 Mar 1;74(3):332-338. doi: 10.1001/jamaneurol.2016.3822.
Krell-Roesch J, et all.