意外にも、日本人にとって身近な「米ぬか」が認知症予防に効果的である可能性

大塚真紀

米ぬかが脳にいい
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米ぬかには多くの栄養成分が含まれているため、美容や健康に良いと好まれています。そして、マウスレベルですが認知症にも効果がある可能性が示唆される研究結果も報告されています。この米ぬかの効果を簡単にご紹介いたします。

米ぬかとは

米ぬかは、玄米を精米すると出る薄い茶色の粉のことです。日本人にとっては、漬物をつける時に使用するなど比較的身近な存在ではないでしょうか。

米ぬかには、玄米の皮と胚芽が含まれており、玄米の約90%の栄養分がつまっています。ビタミンBは白米の約20倍、食物繊維はほうれん草の約10倍含まれており、ミネラルも豊富です。

米ぬかの主な栄養成分は、フィチン、イノシトール、フェルラ酸、ガンマ-オリザノール、植物ステロール、ダイエタリーファイバーなどです。他にはチアミン、GABA、ビタミンB1、B2、ビタミンE、カルシウム、鉄などが含まれることがわかっています。

このように米ぬかには多くの栄養成分が含まれているため、美容や健康目的で白米ではなく玄米を好んで食べる方もいます。

米ぬかがもたらす健康効果

米ぬかがもたらす健康効果としては、認知症を予防する、神経機能を正常に保つ、自律神経を整える、皮膚の調子を整え酸化を防ぐ、高血圧を予防する、コレステロールの吸収を抑える、便秘を改善するなどが挙げられることが多いです。実際に、米ぬかの成分によって認知症が改善するという根拠になっている医学的な報告について紹介します。

2001年に韓国の研究チームが、ネズミに米ぬかの成分であるフェルラ酸を投与したところ、アルツハイマー病で脳に蓄積するといわれているアミロイドベータを抑制することがわかりました。

また、2008年には名古屋市立大学の岡嶋教授が、「コメと疾病予防」の国際シンポジウムで米ぬかに含まれる成分が認知症を予防するという報告をしました。その内容は、米ぬかに含まれるチアミンやガンマ-オリザノール、GABAの成分が胃腸で吸収される際に神経を刺激し、その刺激が脳に伝わり記憶のために重要な海馬の働きをよくするというものでした。認知症では海馬の働きが低下していることがわかっているため、認知症予防になる可能性が示唆されました。

そして同年には、広島大学の中村重信教授によって米ぬかに含まれるフェルラ酸という成分がアルツハイマー病の患者を対象にして効果があるかどうかを明らかにする臨床研究が行われました。研究の内容は、アルツハイマー病患者143人に対し、9か月間フェルラ酸が含まれる健康補助食品を投与し、試験前と試験開始から3か月ごとに認知機能の検査を行い評価するというものでした。アルツハイマー病の症状は、時間経過と共に進行することが知られていますが、フェルラ酸を投与された軽度のアルツハイマー病の患者において試験終了時まで認知機能の改善を認めました。また、中等度の患者においても6か月後まで認知機能の改善を認めました。

中村教授の報告は、ヒトを対象とした臨床研究なので米ぬかのアルツハイマー病に対する一定の予防効果を証明できた貴重な結果だと考えられます。しかし、対象となっている人数が143人と少ないため今後より大規模な研究が期待されます。

米ぬかは脳のミトコンドリアを活性化しアルツハイマー病を予防する

ドイツの研究チームは、米ぬかから抽出したビタミンEがマウスの脳細胞のミトコンドリアを活性化させることを発見し、米ぬかがアルツハイマー病を予防する可能性があることを2016年に「Nutritional Neuroscience」誌に発表しました。

米ぬかの成分であるフェルラ酸やガンマーオリザノールなどのアルツハイマー病に対する予防効果については、すでにいくつか報告がありました。しかし、米ぬかに含まれるビタミンEとアルツハイマー病で低下しているミトコンドリアの活性を改善することに注目した報告は今回が初めてでした。

ミトコンドリアは、人間にとって必要なエネルギーを産生するもので、私たちの細胞1つ1つに含まれています。人間の総細胞数は約60兆個で、1つの細胞に含まれるミトコンドリアの数は少ないもので100個、多いものでは数千個といわれています。特に心臓や腎臓、筋肉、脳などではエネルギーをたくさん必要とするため、ミトコンドリアが多く含まれていることがわかっています。アルツハイマー病ではミトコンドリアのはたらきが低下していることが明らかになっているので、ミトコンドリアを活性化できる薬の開発のために日々研究が行われています。

今回の研究では、加齢マウスを2つのグループに分け、米ぬかから抽出した成分を3週間与えるグループと与えないグループでは、脳の細胞にどのような変化が出るか観察しました。加齢マウスの脳のミトコンドリアの働きが低下していることは、若齢マウスの脳と比較すると明らかでした。また、3週間後の加齢マウスの各グループにおいては、米ぬかを与えられたグループでは与えられなかったグループに比べると、ATP産生などが増加しミトコンドリアが活性化していることがわかりました。ATPは、生体にとって必要なエネルギーのことでミトコンドリアによって作られます。ATPが低下すると脳をはじめとして、さまざまな臓器のはたらきが低下します。

また、研究チームは米ぬかの成分の何が最も有効であったかを調べるために血液中と脳細胞の中の各成分の濃度を測定しました。結果として、米ぬか成分の中でビタミンEが検出されたため、ビタミンEが脳細胞のミトコンドリア活性化に有効であった可能性を明らかにできました。

今回の研究はマウスを対象としたものなので、今後ヒトを対象にした研究で米ぬかのアルツハイマー病に対する予防効果を証明することが期待されています。

(参考論文・参考資料)
Br J Pharmacol. 2001 May;133(1):89-96.
Protection against beta-amyloid peptide toxicity in vivo with long-term administration of ferulic acid.
Yan JJ, Cho JY, Kim HS, Kim KL, Jung JS, Huh SO, Suh HW, Kim YH, Song DK.
Geriatric Medicine(老年医学) Vol.46No.12(2008-12)
Ferulic acidとgarden angelica根抽出物製剤ANM176(TM)がアルツハイマー病患者の認知機能に及ぼす影響
中村重信, 佐々木健, 阿瀬川孝治, 伊丹昭, 伊藤達彦, 清原龍夫, 河野和彦, 松田桜子, 水野裕, 宮原覚, 折笠秀樹, 遠藤英俊
Nutr Neurosci. 2016;19(1):1-10
Rice bran extract improves mitochondrial dysfunction in brains of aged NMRI mice.

Hagl S, Berressem D, Grewal R, Sus N, Frank J, Eckert GP.