トマトに含まれるリコピンはアルツハイマー病を予防する?

大塚真紀

トマト(イメージ)
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トマトに多く含まれるリコピンには強力な抗酸化作用があります。今回紹介するラット対象の研究では、脳の炎症を抑えアルツハイマー病の予防効果があることが明らかになりました。

リコピンとは

リコピンは、トマトやピンクグレープフルーツ、スイカなどに含まれる赤い色素のことです。リコピンはカロテノイドの1種で、カロテノイドとは植物が自らを守るために蓄える天然の色素成分のことをさします。

リコピンを最も多く含む野菜はトマトといわれていますが、含有量は熟成度によって違います。完熟トマトの方が、リコピンが多く含まれています。
リコピンは熱に強い成分なので、トマトジュースやトマトケチャップなどのトマト製品からでも摂取することができます。
リコピンの効果的な摂取量は1日15mgで、大きなトマト約2個分です。トマトジュースであれば、1缶で摂取できる量です。

リコピンがもたらす健康効果

リコピンには、強力な抗酸化作用があることが知られています。例えば、ビタミンEと比べるとリコピンの抗酸化作用は約100倍といわれています。

抗酸化作用とは、体の中に発生する有毒な活性酸素に対抗する作用のことです。活性酸素は、体の中のタンパク質や脂質、DNAを傷つけるので老化や生活習慣病、がんなどの原因になることがわかっています。

今までの医学研究により、リコピンには動脈硬化予防作用、神経保護作用、抗がん作用、抗コレステロール作用があることがわかっています。

アルツハイマー病の予防にリコピンが有効?

インドの研究チームは、アルツハイマー病のラットを用いた研究を行い、リコピンが脳の炎症を抑えることによってアルツハイマー病に伴う記憶障害を改善する可能性があると2015年7月に「Journal of Nutritional Biochemistry」誌に発表しました。

ラットを何も与えないグループ、リコピンのみ与えるグループ、アルツハイマー病を引き起こすアミロイドを注射するグループ、アミロイドの注射とリコピンを与えるグループ、アミロイドの注射とアルツハイマー病治療薬であるリバスチグミンを与えるグループに分け、認知機能障害の程度を測定する検査や脳内のミトコンドリアや炎症について解析しました。

アミロイドとリコピンを与えるグループにおいては、ラットの体重1kgあたり1mg、2mg、4mgと投与量を変えて、治療効果がどのように変化するかを観察しました。
結果としては、アミロイドを投与してから14日にわたり、リコピンを与えたグループと治療薬であるリバスチグミンを与えたグループにおいて認知機能障害の改善を認めました。
また、リコピンは量が多いほど、つまり体重あたり1mgを与えたグループよりも4mg与えたグループの方が治療効果を高く認めました。

アルツハイマー病のラットに対して、リコピンを与えると脳の中の炎症物質であるTNF-α、TGF-β、IL-1β、NF-κBなどを抑えることによってミトコンドリアの機能障害を改善することが明らかになりました。脳内の炎症物質やミトコンドリアの機能障害は、アルツハイマー病や認知症の原因の1つと考えられています。

つまり、今回の研究からリコピンには脳の炎症を改善する作用によってアルツハイマー病を改善する可能性があることが明らかになりました。今後、リコピンがアルツハイマー病や認知機能障害の治療薬、または予防薬の1つとして期待できると研究チームは結論付けています。

しかし今回の研究は、ラットを対象に行われたため、今後ヒトを対象とした研究が行われることが期待されます。

<参考論文・参考資料>
J Nutr Biochem. 2015 Jul;26(7):736-44. doi:10.1016/j.jnutbio.2015.01.012. Epub 2015 Mar 20.
Lycopene abrogates Aβ(1-42)-mediated neuroinflammatory cascade in an experimental model of Alzheimer’s disease.
Sachdeva AK, Chopra K
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25869595)