ビールの苦み成分がアルツハイマー病を予防する

大塚真紀

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出典元:pixabay.com

アルコールと認知症の関係について、これまでnounowでもいくつかご紹介してきましたが、今回はビールに含まれる苦みの成分がアルツハイマー病を予防する可能性について研究した論文をご紹介します。

ビールの栄養分

ビールには、炭水化物、タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなどがバランスよく含まれています。ビタミンB群は体の代謝を助ける役割があり、ミネラルも体が正常にはたらくために大切な栄養素です。またビールに含まれる酵母は、主にビタミンB1、B2、B6、B12などが豊富といわれています。ビタミンB1は糖質の分解、ビタミンB2は糖質や脂質の代謝促進、ビタミンB6は老化防止、ビタミンB12は赤血球をつくることで知られています。

今回紹介する研究で注目されているホップには、ビールの泡立ちをよくするだけでなく、にごりを除いて苦味と香りを出すはたらきがあるといわれています。雑菌の増殖も防ぐので、ビールの腐敗を防止する効果も期待できます。

ビールの健康効果

ビールにはタンパク質やビタミン類、ミネラルなどがバランスよく含まれているので、適量を飲めば健康にもよいのではないかと考えられています。ホップには、フィストロゲンとよばれる女性ホルモンと似たようなはたらきをする成分が含まれており、ホルモンバランスの乱れで起こるような冷え症、肩こり、倦怠感、抜け毛などの症状が改善する可能性を期待できます。また、気持ちを安定させる効果もあるようなので、ストレスの軽減にも良いといわれています。

ビールにはビタミンB群やミネラル分だけでなく、酸化を防ぐポリフェノールも含まれているので、美しい肌の維持やアンチエイジング効果も期待できます。以前にnounowでも紹介したように、ビールだけでなく、適度なアルコールの摂取はアルツハイマー病患者の死亡リスクが低くなることもわかっています適度の飲酒でアルツハイマー病患者の死亡リスクは低くなる

ただし、ビールでもその他のアルコールでも飲みすぎるのはよくありません。公益社団法人アルコール健康医学協会は、ビールの適量を1日500ml程度としています。さらに人によってアルコールを分解できる酵素がある場合とない場合があるので、それによってもアルコールの影響の受け方は変わります。体に良いからといって毎日飲むのもおすすめできないので、週に2日以上はアルコールを摂取しない日をつくるのも大切です。

ビールの苦み成分はアルツハイマー病を予防する

日本の研究チームは、マウスを使用した研究で、ビールの苦み成分であるイソα酸にアルツハイマー病を予防する可能性があることを2017年1月に「Journal of Biological Chemistry」誌に発表しました。

研究チームはアルツハイマー病のモデルマウスに対して3か月間、ビールの苦み成分であるイソα酸を含むエサを与え、何も与えない群に比べて脳内にどのような変化が出るか観察しました。

ビールの苦み成分であるイソα酸を投与されたマウスは、何も投与されなかったマウスに比べて脳内のβアミロイドの量が明らかに低下していました。さらに、脳内の炎症が改善されており、ミクログリアが老廃物を除去するはたらきが向上していることがわかりました。また、脳内の神経細胞の量が増加し、認知機能も改善していました。

βアミロイドはアルツハイマー病の原因の1つとして考えられている、脳内に蓄積する異常なタンパクのことです。ミクログリアは、脳の中に存在する免疫細胞で、傷ついた脳細胞を修復するはたらきがあるといわれています。

今回の研究結果を合わせて、研究チームはビールの苦み成分であるイソα酸は、脳内のβアミロイドの蓄積や炎症の抑制を介してアルツハイマー病を予防できる可能性があることを明らかにしました。

今までワインに含まれるポリフェノールによる認知症の予防効果などはいくつかの研究で検証されてきましたが、ビールの成分がアルツハイマー病を予防する効果があるかどうかはわかっていませんでした。今回の研究から、ビールに含まれる苦み成分のイソα酸がアルツハイマー病を予防する可能性が明らかになりました。しかし、今回の研究はマウスを対象にしているので、今後ヒトを対象とした研究が行われることが期待されます。

<参考論文>
J Biol Chem. 2017 Jan 13. pii: jbc.M116.763813. doi: 10.1074/jbc.M116.763813. [Epub ahead of print] Iso-α-acids, bitter components of beer, prevent inflammation and cognitive decline induced in a mouse model of Alzheimer’s disease.
Ano Y, Dhata A, Taniguchi Y, Hoshi A, Uchida K, Takashima A, Nakayama H.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28087694)