和食の認知症予防効果

大塚真紀

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日本人を対象とした研究から和食を食べることで認知症発症リスクが低くなるとした論文内容についてご紹介します。

世界から注目される和食

伝統的な和食は、栄養バランスが良いだけでなく、見た目も美しいものです。2013年に和食が世界遺産に登録された理由は、新鮮で旬な食材を使用しながら自然の美しさや季節の変化を表現し、健康にも良い食事と認められたからといわれています。

世界でも和食に注目が集まっており、欧米では健康維持やダイエット目的で和食に用いられる食材や料理を毎日の食事に取り入れる人もいます。

1975年にアメリカでは、自国において心筋梗塞などの心疾患やがん、脳梗塞、肥満が多いことを懸念し、アメリカ上院栄養問題特別委員会が設置され、医師や学者などによって5000ページにわたる報告書がまとめられました。そして、報告書の結果から高脂肪、高カロリーな欧米の食事が病気の原因と気づき、和食こそ健康に良い食事だと考えるようになりました。この報告書の結果を受けて、アメリカでは和食に用いられる米や豆腐、魚介類や野菜などを摂るように心がけるようになったといわれています。

和食が健康に良い理由

伝統的な和食は、米などの穀物、野菜、魚介類、豆類などが主な食材です。欧米の食事に比べると、食物繊維が多く、低脂肪、低カロリーなので肥満や心疾患、脳卒中などの生活習慣病を予防する効果を期待できます。最近注目を集めている腸内細菌に関する研究でも、腸内細菌のえさとなる食物繊維を多く含む和食は腸内環境を整えることによってさまざまな病気を防ぐ可能性があると報告されています。

また、和食では生の食材や発酵食品を積極的に取り入れます。食材の栄養素を壊さずに食べるためには、生で食べるのが最も良い方法です。刺身や馬刺し、生卵などは日本食でよく見られます。味噌や醤油、納豆などは和食に欠かせない発酵食品ですが、腸内環境を整え、免疫力を高める効果も期待できます。

和食が美味しい理由のひとつにうま味があるといわれています。昆布やかつお節などからとった出汁を使うことで、奥行きのある味にできるだけでなく、調味料を減らせます。調味料を減らすことができれば、過剰な塩分や糖分の使用量が減り、高血圧や肥満、動脈硬化などの発症リスクを減らすことにつながります。

このように和食は、さまざまな理由から健康に良いと考えられています。

和食を食べると認知症予防になる

和食は健康に良いことは明らかなので、認知症の発症予防にもなるのではないかと推測されてきました。しかし、今までヒトを対象とした研究は行われていませんでした。

日本の研究チームは、高齢者を対象にした研究を行い、和食は認知症の発症を予防する可能性があることを2016年6月29日に「The journals of gerontology」誌に報告しました。
研究チームは、65歳以上の高齢者14402名を対象にどのような食事をしているか質問票で集計しました。質問票には、39の食品と飲み物の消費に関するアンケートを記載しました。認知症発症に関しては、公的介護保険のデータを参照しました。

質問票の結果により、研究チームは和食をよく食べているグループ(和食パターン)、動物性の食品を多く食べているグループ(動物性食品パターン)、乳製品を多く食べているグループ(高乳製品パターン)に分け、認知症の発症にどのように関連するか調べました。研究期間は5.7年で、認知症を発症した人は全体の9%でした。

研究結果によると、和食を食べている人は認知症の発症リスクが低くなることがわかりました。具体的には、和食をよく食べている人は、ほとんど食べていない人に比べて認知症発症リスクが20%減ることが明らかになりました。また、動物性食品や乳製品をよく食べているグループにおいて、認知症発症との関連は認めませんでした。

今回の研究から、すでにさまざまな健康効果があると報告されている和食には認知症予防効果もあることがわかりました。今回の研究では日本人が対象となっていますが、今後日本人以外でも和食の認知症予防効果があるかどうか検証されることが期待されます。

<参照サイト・参考論文>
1)  J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2016 Oct;71(10):1322-8. doi: 10.1093/gerona/glw117. Epub 2016 Jun 29.
Dietary Patterns and Incident Dementia in Elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study.
Tomata Y, Sugiyama K, Kaiho Y, Honkura K, Watanabe T, Zhang S, Sugawara Y, Tsuji I.