転職は脳に効く?

佐藤洋平

転職は脳に効く(イメージ)
出典元:pixabay.com

転職はヒトの脳にどのような影響をもたらしうるのでしょうか?デンキウナギの実験から考察してみます。

脳は新たな社会的刺激で発達する

脳は社会的な刺激に敏感に反応するようで、何かしら社会的な環境に置かれると脳の発達が促されることが様々な研究から示されています。

しかし、そのまま同じ環境にいれば良いというわけではなく、ポンと放り込まれた最初のうちは脳も発達するけれども、それが長くなりマンネリ化すると元通りになってしまうことも様々な研究から示されています。

デンキウナギの研究が示す脳発達の法則

今回取り上げる論文は環境の変化が脳にどのような影響を与えるかについて、デンキウナギを用いて調べたものです。

この研究ではデンキウナギを

  1. 一匹で14日間過ごさせる
  2. 7日ごとに相方を変え,14日間過ごさせる
  3. 2日ごとに相方を変え,14日間過ごさせる

という条件で脳の変化やコミュニケーション活動の変化を調べたところ、ころころ相方が変わる3の条件が最も脳が変化し(新生細胞の数が増え)、コミュニケーション活動の量も高まっていたことが示されています。

この結果から、ただ社会的な環境におけば脳がよい方に変化するというわけではなく、社会が持つ物珍しさ、つまり新奇性があるかぎりにおいて脳の変化が促されるのではないかということが述べられています。

どんなエキサイティングな仕事でもいずれマンネリになるのなら、そこに脳の発達はなくなり新たな環境、新たな刺激に出会うときに脳の発達があるのかもしれません。

【論文要旨】

長い間、豊かな環境と社会的交流によって脳の神経発芽が促されると考えられてきた。しかしながら多くの場合は効果は一過性であり、長期間同一の環境にさらされた場合その効果は殆ど無くなることが報告されている。

今回電気魚の一種を用いて実験を行った。実験では電気魚を7日間ペアにして生育することで、一匹で育てた場合と比べて脳の神経細胞の産生が促されることが示された。しかしながら14日間ペアにして生育させた場合、その効果は一匹で育てた場合と大きく変わらなかった。

この実験に加えて社会的な新奇性が与える影響について調査を行った。この実験では14日間同じペアで過ごさせる場合と(新奇性なし)、7日ごとにペアを2回変える場合と(低新奇性)、2日ごとにペアを7回変える場合(高新奇性)で、電気魚の電気信号の発信の頻度をコミュニケーションの指標として測定を行った。実験終了後に染色剤を用いて脳の神経細胞の状態について評価を行った結果、新奇性のない場合には一匹で育てた場合と同様の神経細胞の増加率が認められ、高新奇性が最も高い増加率が認められた。また電気信号の発信頻度も同様に新奇性が高いほど高くなる傾向を示した。この結果から神経細胞の維持と増大は単なる社会環境そのものではなく、社会環境がもたらす新奇性によって影響されることが示唆された。

(出典)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/dneu.22063/full
Dev Neurobiol. 2013 Apr;73(4):324-32. doi: 10.1002/dneu.22063. Epub 2012 Nov 26.
Social novelty enhances brain cell proliferation, cell survival, and chirp production in an electric fish, Apteronotus leptorhynchus.
Dunlap KD1, Chung M.


出典:「脳科学 リハビリテーション」)