すごい記憶力~スーパーエイジャーの脳は何が違うのか

工樂真澄

superager
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「スーパーエイジャー」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか? お年を召してもなお、若い頃の記憶力を保っている高齢者の方たちのことです。今回はスーパーエイジャーに関する脳の研究をご紹介します。

スーパーエイジャーって?

「Superager」を日本語にすると「超高齢者」とでもなるのでしょうが、彼らは普通のお年寄りとは少し違います。80歳を超えてもなお、55歳前後の人々と同程度の記憶力をお持ちだというのです。

その記憶力は一体どれほどすごいのでしょう? 具体的な例を挙げると、15分の間に15の単語を覚えてもらったとして、80歳以上の高齢者では5つぐらい思い出せるのが普通だそうです。しかしスーパーエイジャーは、その倍近い9つを思い出すことができるというのです。

どうしてこのような高い記憶力を保っているのでしょうか?

2016年7月にハンガリーで行われた国際記憶学会で、シカゴのノースウェスタン大学のロガルスキー博士は、スーパーエイジャーについての研究発表を行いました。

博士らの研究に協力したのは、千人を超える高齢者の中から選ばれた、特に記憶力が優れていた62人です。これらの人々をスーパーエイジャーとして、その性格や生活習慣、また今まで歩んできた人生についての調査を行い、さらに脳を詳細に観察しました。

生活習慣に関しては、今のところこれといって特別な点は見つかっていません。お酒やタバコをたしなむ人もいますし、皆が質素な食事を心がけているというわけでもありません。また特にお医者さんや弁護士さんが多いというわけでもなく、IQが高い人たちばかりというわけでもありませんでした。

スーパーエイジャーとそうでない人の違いとは?

それではどこに違いがあるのでしょう? 彼らと普通の人たちとの違いは、やはり「脳」にあるようです。博士らは以前の研究の中で、スーパーエイジャーの脳が普通の人たちよりも「縮みにくい」ことを明らかにしています。中でも「前帯状皮質」とよばれる領域が、スーパーエイジャーでは同年代の高齢者よりも「厚み」があることがわかっています。

前帯状皮質とは脳の内側にある「帯状回」という部分の前側を指し、自律神経の調節や、喜びや悲しみなどの「感情」を処理していると考えられている部分です。それだけでなく、物事を感じとったり、また条件に従って行動をコントロールしたりもしています。このように多様な働きがあることからもこの領域の重要性はわかりますが、よく知られているのは、うつ病の人ではこの領域の活動に異常が見られるということです。

またスーパーエイジャーの脳をMRIで調べたところ、他の高齢者と比べて脳全体が縮みにくいことが明らかになりました。一般に脳は40歳頃から徐々に委縮し始め、10年で約5%縮むと言われます。1年半の間にどれくらい脳が縮むかを調べたところ、普通の高齢者では2%ほど縮んだのに対し、スーパーエイジャーは0.8%しか縮んでいないことが明らかになりました。

ロガルスキー博士の研究チームは現在、スーパーエイジャーの脳が縮みにくい要因を遺伝子レベルで探っています。

ポジティブ思考が認知機能維持には大切?

その他にもスーパーエイジャーの研究で明らかになったのは、彼らがほとんどの場合に積極的で、自分のことだけでなく他の人にも興味があるということです。認知機能がいつまでもよく保たれることと、このような性格とは決して無関係ではないのでしょう。

この先スーパーエイジャーに関する研究が進んで、年をとっても認知機能を保つ方法がわかれば、きっとたくさんの人が恩恵を受けることでしょう。博士らの今後の研究成果に期待せずにはいられません。

The SuperAging Study: Neurobiologic factors coupled with unusually high episodic memory over age 80.
Rogalski E. et al. (A-0279)
International Conference on Memory 17-22 July 2016 (Budapest, Hungary) http://www.icom2016.com/

https://www.newscientist.com/article/2104221-superagers-with-amazing-memories-have-shrink-resistant-brains/