ぶら下がる人参によって活発になる脳領域が違う?

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

欲望に向かって走らせる報酬系という脳のシステム。今回は欲望の種類によって活発になる脳領域が異なるとする研究をご紹介します。

脳の中の欲望システム

ヒトは生まれながらにして欲望の生き物です。乳児であれば乳を求め、長じてお菓子やおもちゃ、さらに長じては金銭や社会的地位、そして健康というように。

ヒトは生まれてから死ぬまで目の前のニンジンに向かって走る生き物だとおもうのですが、果たしてこのヒトを人参に向かって走らせているのは脳の中のどのような部分なのでしょうか。

脳の中には欲望に向かって走らせるシステムがあり、これは報酬系と呼ばれています。

具体的には、進化の過程で爬虫類以降引き継いでいる大脳基底核とよばれる古い脳と、感情・感覚に絡むいわゆるfeelingが成り立つために重要な島皮質と呼ばれる部分、さらには知性の中枢、前頭前野の中でもとりわけ情動的な機能に絡む前頭眼窩野と呼ばれる部分がつながって、目の前のニンジンに向かっては知らせるようなシステムが成り立っているようです。

今回取り上げる論文は、この報酬系について過去の研究をもとに詳しく調べたものです。

目の前の人参といってもヒトの人参は多岐にわたり、この研究では
①金銭刺激
②エロチック刺激
③食品刺激
の3つでこの報酬系がどのように違うかについて調べています。

結論を述べると、上記3つの刺激も大枠のシステムは同じであるものの、①の金銭刺激ではとりわけ人類になってから発達した前頭前野の部分が盛んに活動しているようで、同じ人参でも金銭のような二次的欲求(お金で多くのものを買える)については前頭前野の関わりが強いのではないかということが述べられています。

論文要旨

脳の報酬メカニズムについて解明されていない点の1つに報酬関連活動が報酬の性質によってどのように影響されるかということがある。

本稿では、神経イメージングの文献をレビューし、人間の脳において一次および二次報酬の表現がどの程度重複しているかを明示的に評価する。

この目標を達成するために、私たちは、87件の研究(1452人の被験者)の活性化尤度推定(ALE)メタアナリシスを行い、脳の反応を金銭的、エロチック的、および食品報酬の結果と比較した。

これらの3つの報酬は、ピーク活動の強度と位置にいくつかの変化があるものの、腹側前頭前葉、腹側線条体、扁桃体、前部島皮質および前腹側視床を含む一般的な脳ネットワークを頑強に結びついていた。

金銭的報酬に固有の応答は眼窩前頭皮質の最前部に観察された。

これは抽象的な二次的報酬は、進化的に近年発達した領域で表されるという知見を支持するものであった。

対照的に、エロチックな刺激は扁桃体において特に強い応答を誘発したが、食物およびエロチックな(すなわち一次)報酬は前部島皮質でより強く表された。

これらの結果は、経験豊かな報酬価値の計算が中核的な「報酬システム」を賦活するだけでなく、報酬の種類依存型の脳構造を賦活することを示した。

https://www.researchgate.net/…/links/02bfe513f6bc27c1550000…
Neurosci Biobehav Rev. 2013 May;37(4):681-96. doi: 10.1016/j.neubiorev.2013.02.002. Epub 2013 Feb 13.
Processing of primary and secondary rewards: a quantitative meta-analysis and review of human functional neuroimaging studies.
Sescousse G1, Caldú X, Segura B, Dreher JC.
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コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション