誘惑に打ち勝つには?〜脳科学的見地から

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

誘惑に打ち勝とうとしている時、脳はどのように活動しているのでしょうか? 性的な動画を普通に見ている時と感情を抑制して見ている時の脳活動の違いを研究した論文をご紹介します。

感情を抑える時に活発になる脳領域は?

旧約聖書のアダムとイブの話を引くまでもなく、誘惑とどう折り合いを付けるかというのは,私達がサルからヒトになってから大きな課題であると思うのですが、脳科学的に見たとき、誘惑を抑えているときには脳はどのように活動しているのでしょうか。

今回取り上げる論文は、性的な動画を見せて、普通に見ているときと性的感情を抑制しながら見ている時の脳活動の違いについて調べたものです。

結果を述べると普通にドキドキしながら見ているときは脳の中でも進化的に古い辺縁系と呼ばれる部分(扁桃体,視床下核)が中心に活動しているのですが、感情を抑えながらクールに見ているときはこれらの辺縁系の活動は低下し、代わりに知性の中枢とも呼ばれる前頭前野や、知性と感情のつなぎ目にあたる前帯状皮質の活動が高まることが示されています。

加えて前頭前野の中でもコトバの処理に関わる左脳領域の活動が高まることも示されています。

怒りを抑えたいときは「私は怒っている,私は怒っている・・・・」と10回唱えると良いというのを聞いたことがありますがコトバにはそれ自体、感情を抑える働きもあるのかなと思いました。

論文要旨

認知と感情との関係の根本的な問題は、感情制御に関わる神経基盤の問題である。

本研究では男性被験者を対象に、エロチックな動画に対して通常の方法で応答する、もしくは性的覚醒を自覚的に抑制して応答する実験を行った。

結果は、性的覚醒がエロチックな動画に応答して引き起こされ、右扁桃体、右前側頭極および視床下部のような「辺縁系」および傍辺縁系構造における活性化と関連していることを示した。

さらに、エロチックな刺激を見ることによって発生した性的興奮の抑制に関係したのは、右上前頭回と右前帯状回であった。
またこの時辺縁系領域には活性化は見られなかった。

これらの結果から、感情的な自己調節には前頭前野領域および皮質下辺縁構造を含む神経回路が関与することが考えられた。また、心理的なプロセスの性質を自発的に変化させることによって、人間の脳の電気化学的動態に影響を与えることが示唆された。

http://www.jneurosci.org/content/jneuro/21/18/RC165.full.pdf
J Neurosci. 2001 Sep 15;21(18):RC165.
Neural correlates of conscious self-regulation of emotion.
Beauregard M1, Lévesque J, Bourgouin P.
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コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション