いつの間にかハマってる!? PPAPの脳科学

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

日本、いや世界を席巻したピコ太郎さんの「PPAP」。なぜか繰り返し見たくなり、いつの間にか自分でも踊っていた、、という方も多いのではないでしょうか?今回は、まさにPPAPマジックのタネ明かしをしてくれるような論文をご紹介します。

慣れるほど好きになる

イギリス、ウェールズにあるバンガー大学のKirsch博士らは、24人の若者を対象にダンスパフォーマンス実験を行い、2015年に論文として発表しました。

人は見慣れたもの、聞き慣れたものほど、美しい、または好ましいと感じる傾向があります。博士らは、「慣れる」ことが嗜好性やパフォーマンスにどのように反映されるのかに興味を持ち、研究を行いました。

実験にはXbox360 Kinectのダンスゲームが使われました。これはWebカメラがプレーヤーの動きを読み取ることで、リモコンやコントローラーを使わずプレーできるゲーム機です。

まず中程度レベルの難易度の8つのダンス曲とビデオを用意しました。被験者を4つの組に分け、それぞれに2曲ずつをトレーニング曲として割り当てます。さらにそれぞれの組は4つのグループに分けられ、異なる方法でトレーニングを4日間行ってもらいました。

1グループ目は、ダンスビデオを見ながら真似をして踊る、というトレーニングを行いました。2つ目のグループはダンスビデオを見るだけ、3つ目は映像なしでその曲を聴くだけで、4グループ目はトレーニングを全く行いませんでした。

毎日のトレーニング前後には、8つのダンス曲それぞれについての質問に答えてもらいます。このとき機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で、脳の活動をモニターします。画面にダンスの画像が数秒映し出され、その後に「このダンスは好きか」と聞かれるので、4段階で答えます。さらに「このダンスをうまく踊ることが出来そうか」という質問が出るので、これも4段階で答えます。

4日間のトレーニングの後、すべての被験者に8曲すべてのダンスを、ビデオを真似て踊ってもらいました。それぞれのダンスパフォーマンスは、ゲーム機によって採点されました。

実験の結果、ビデオを真似て踊るトレーニングをしたグループは、当然ながら、自分が割り当てられた曲で高得点をあげました。さらに、自分がトレーニングに使った曲を最も好み、またうまく踊れそうだ、と感じる度合いが強いこともわかりました。ダンスビデオを見ていただけのグループでも同じ傾向が表れましたが、曲を聴いただけのグループには、この傾向は見られませんでした。

多種類の感覚が統合され、感情を生み出す

「慣れることで好きになる」メカニズムを調べるために、博士らはfMRI画像を解析して、日を経るごとに反応が強くなる脳の領域を探しだしました。

その結果、毎日のトレーニング前のfMRIで、「視床腹部」と「側坐核」といわれるところの反応が強くなっていくことがわかりました。これは「報酬系」とよばれる神経回路の一部で、嬉しいときなどにドーパミンという神経伝達物質が放出されて、快感を生み出します。

またトレーニング後のfMRIから、両側の「上側頭溝」と右側「上側頭回」と呼ばれるところの反応が強くなることがわかりました。この領域は様々な感覚を統合するところであり、また感情をつかさどる部位とも繋がっているとされます。

これらの結果を総合して、目や耳から繰り返しインプットされた感覚情報に、動きを生み出す運動情報が加わって、それが感情や快感を生み出す回路を刺激するメカニズムがあるのではないかと、論文では推測しています。

習うより慣れろ

今回の研究から、もとは全く興味がなかったダンスでも、続けて見たり聴いたりするうちに好きになり、さらに動きを真似ることでますます好きになることがわかります。

PPAPはまさにその好例で、世界中を魅了したのもうなずける気がします。このメカニズムは「習うより慣れろ」に通じるところがあり、ダンスや音楽だけでなく、教育現場やコマーシャルなどにも広く応用が効くのではないでしょうか。

ご紹介した論文
Dance experience sculpts aesthetic perception and related brain circuits.
Kirsch LP et al. Ann N Y Acad Sci. 2015 Mar;1337:130-9.

参考文献
「カンデル神経科学」 メディカル・サイエンス・インターナショナル