なぜ中年は働き盛りなのか?ドーパミンと認知機能の逆U字仮説

佐藤洋平

よく中年期が最も仕事ができる時期といいます。若者と高齢者のドーパミンの分泌量と認知機能の関係に関する研究からその理由を考えてみます。

報酬系と前頭前野の関係

仕事というのは若すぎてもだめ、歳を取りすぎていてもだめで40前後の中年期が仕事の脂が乗ってくる時というのは、随分昔から言われているのですがこれはいったいなぜなのでしょうか。

今回取り上げる論文は、ヒトを奮い立たせ行動させるシステムである報酬系と前頭前野の関わりについて、若者と老人でどのように違うのかについて比べたものです。

一般に若いうちはガツガツしていて、歳を取ってくると欲望が枯れてくることが知られていますが、これは脳科学的には脳(中脳)から出るドーパミンの量と関係しているようです。

このドーパミンというのは脳のあちらこちらに働きかけて、欲しいものをゲットできるように脳の働きを調整するような働きがあるのですが、これは若いうちは大分多く出て、歳を取ると減ってくる傾向があるそうです。

この研究では平均年齢25歳の若者20名と平均年齢66歳の高齢者13名を対象にスロットマシン課題を行わせている時のドーパミンの分泌量と知性と関連する脳領域(背外側前頭前野)の関係について調べました。

結果を述べると
①ドーパミンの分泌量は若者のほうが多かった
②若者ではドーパミンの量が増えるほど知性に関わる脳活動が低下した
③高齢者ではドーパミンの量が増えるほど知性に関わる脳活動が増大した
という矛盾した二つの結果が出たそうです。

このような矛盾した結果が出た背景として著者らは、ドーパミンと認知機能の間にある逆U字の関係にあるのではないかということを述べています。

これはドーパミンが少なくテンションが低くても認知機能がパッとせず、またドーパミンが多すぎて頭に血が上りすぎていても認知機能が良くはない。
ほどほどにドーパミンが出てほどほどにテンションが高い時にもっとも認知機能が良くなるという、逆U字の関係になっているということです。

このようなシステムが結果②と③の矛盾した現象を説明できるのではないかということが述べられています。

これはあくまで仮説であるので、なんとも言えませんがほどほどにドーパミンが出て、前頭前野の活性化が最適化される中年が仕事においても、もっとも適切な判断ができるということもあるのかなあと妄想しました。

論文要旨

報酬処理において重要な役割を果たすドーパミンシステムは、老化に対して脆弱である。

ドーパミン受容体およびトランスポーターについての老化による著しい減少現象が報告されているが、この年齢関連のドーパミン作動性低下の神経機能的結果についてはほとんど知られていない。

動物を対象にした研究では、相当な量のデータが、中脳におけるドーパミン活性が報酬処理と密接に関連していることを示している。

ヒトでは、薬理学的および臨床的研究からの間接的な証拠もこのような関連を支持するが、中脳ドーパミンと報酬関連神経応答との間の関連を直接的に証明していない。

さらに、高齢のヒトでは、この関係の変化に対する生体内データはない。ここでは、同じ被験者における6- [18 F]フルオロドーパ(FDOPA)ポジトロン放出断層撮影(PET)およびイベント関連3T機能性磁気共鳴イメージング(fMRI)を使用して、中脳ドーパミン合成と報酬関連前頭前野の関係について,健康な老化が報酬システムにおける機能的変化を誘導し、中脳におけるドーパミンの合成と前頭前部活動との関係(正の相関から負の相関まで)がシステムレベルで変化することを示す。

本研究は、健康な若者および高齢の被験者における中脳ドーパミン機能と報酬システムとの間の相互作用の重要な特徴付けを示し、老化に伴うこの調節回路の変化を同定するものである。

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Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Sep 30; 105(39): 15106–15111.
Published online 2008 Sep 15. doi: 10.1073/pnas.0802127105
PMCID: PMC2567500
From the Cover
Neuroscience
Age-related changes in midbrain dopaminergic regulation of the human reward system
Jean-Claude Dreher,*†‡ Andreas Meyer-Lindenberg,*§ Philip Kohn,* and Karen Faith Berman*‡
See commentary “Is getting older all that rewarding?” in volume 105 on page 14751.
This article has been cited by other articles in PMC.
コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション