ある遺伝子をもつ・もたないで食べている時の脳活動が違う?

佐藤洋平

food-1956554_1920
出典元:pixabay.com

食べ物に対する欲望の強さには個人差がありますが、ある遺伝子をもつ人ともたない人で食べるときの脳活動が違うとする論文をご紹介します。

過食遺伝子?

欲望の矛先というのは、ヒトにより色々で、身内も含め色んな人を見ていると、食べ物に対する欲望の強さというのは大分個人差があるような気がするのですが、これは生理学的にはどのように捉えることができるのでしょうか。

今回取り上げる論文は、過食に関連すると考えられている遺伝子について詳しく調べたものです。

この研究では、TaqIA A1変異体という遺伝子を取り上げているのですが、この遺伝子は報酬系の主軸となるドーパミンの代謝を司る遺伝子に影響を与え、このドーパミン代謝を介して食べ物に対する欲求を強くすると考えられているものなのです。

実験では同じ体型、性格、衝動性、教育歴、ミルクシェイクへの嗜好性といった属性を揃えた上で、TaqIA A1変異体を持っているヒトと持っていないヒトでミルクシェイクを摂取している時の脳活動を機能的MRIで調べているのですが、
ミルクシェイクを摂取したあとの感想もほぼ同様であったにも関わらず、TaqIA A1変異体をもっている被験者は報酬系に関係する中脳や前頭眼窩皮質に応答増加が見られたことが示されています。

同じものを見ても、ある遺伝子を持っているヒトは強く惹きつけられ、そうでないヒトはそんなに惹きつけられないということもあるのかなと思いました。

論文要旨

遺伝的および神経イメージング技術を組み合わせることにより、神経生理学における個体差および潜在的な疾患脆弱性の生物学的根拠が解明される可能性がある。

TaqIA A1変異体は、減少したDRD2受容体密度、高体重および食物補強と関連している。

また、食物に対する脳の応答と将来の体重増加との関係を調整する機能がある。

そのためこの遺伝子多型は過食と神経生理学的に関連することが考えられている。

過食を説明する他の可能性として、衝動性や食事スタイル、報酬の駆動および知覚(多型と一緒に変化する可能性がある)などの要因が、報酬のコード付けや摂食行動に影響を及ぼすことである。

これらの選択肢を区別するために、TaqIA A1(A1 +; n = 13)を持つ群と(A1-; n = 13)を持たない群に分け,健康な被験者におけるミルクシェイクの摂取に対する神経応答を機能性磁気共鳴画像法(fMRI)を使用して測定を行った。

グループは、年齢、性別、教育、体格指数、衝動性、摂食様式、およびミルクシェイクに対する知覚反応などのリンクされた個々の因子に適合するように、より大きな群から選択し,中脳、視床、および前頭眼窩皮質における遺伝子型(A1 +対A1-)と刺激(ミルクシェイク対無味/無臭ベースライン)との間の相互作用を実証した。

A1-はミルクシェイクに対する応答の増加を示し、A1 +はベースラインに対するミルクシェイクに対する応答の減少を示す。

この相互作用は、ミルクシェイクの心地よさ、強さ、親しみやすさの類似した評価にもかかわらず生じる。

したがって、本発明者らは、食欲をそそる食物の摂取中のTaqIA A1多型と脳応答との間に特定の関連があると結論する。

J Neurosci. Author manuscript; available in PMC 2010 Aug 17.
Published in final edited form as:
J Neurosci. 2010 Feb 17; 30(7): 2428–2432.
doi: 10.1523/JNEUROSCI.5483-09.2010
PMCID: PMC2831082
NIHMSID: NIHMS179276
Genetically determined differences in brain response to a primary food reward
Jennifer A. Felsted,1 Xueying Ren,1,2 Francois Chouinard-Decorte,1 and Dana M. Small1,2,*

コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション