マルチタスクでは言語の反応や理解が低下する

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

音楽やラジオを聴きながら、またはテレビを横目で見ながら行う「ながら勉強」。テスト前に「ながら勉強」してしまい、結局、良い結果が出せなかった、という経験をされた方もおられるでしょう。今回はマルチタスクを行っているときの脳について調べた研究をご紹介します。

マルチタスクは効率が悪い

複数のことを並行して行うのが「マルチタスク」です。一見すると効率が良いように思えますが、実は最大で40%ほど生産性が落ちることがわかっています。フィンランドのAalto大学のLahnakoski博士らのグループは、マルチタスクを行っているときと、一つのことに集中しているときでは、脳の活動にどのような違いがあるのかを機能的核磁気共鳴装置(fMRI)を用いて調べ、2017年に論文を発表しました。

実験に参加したのは21歳から34歳までの18人の若者です。被験者にはfMRIの装置をつけて2種類の映像を見てもらいました。映像は「スターウォーズ:エピソードIV」「インディ・ジョーンズ」「007シリーズ」の3つの映画から抜粋されて作られました。1つ目の「連続映像」は、それぞれの映画から連続した6分ほどの映像を切り出し、順番につなげたものです。2つ目の「マルチタスク映像」は、それぞれの映画から切り出した6分の映像をさらに8本ずつに断片化して、どの映画かに関係なくバラバラにつなげたものです。

fMRIによる観察の結果、「連続映像」と「マルチタスク映像」を見ているときとでは、脳の反応が異なることがわかりました。両映像に対する反応で特に差が大きかったのは、脳の両半球の「後方上側頭溝」、左半球の「側頭―頭頂接合部」「中側頭回」とよばれる領域で、これらは連続映像では強く反応しました。また、マルチタスク映像で特に反応が強かったのは、右の「上側頭回」とよばれるところでした。

次に音の大きさや色、セリフなど、映像から得られる刺激の違いによる脳の反応を詳細に調べました。多くの刺激に対する反応は両映像で似通っていましたが、唯一セリフの場面では「側頭葉の後方」の反応が両映像間では大きく異なり、連続映像では強く反応することがわかりました。この領域は言語を理解するために重要な領域です。この結果より、マルチタスクでは一つのことを行っているときよりも、言語への反応や理解が低下する可能性が示されました。

「ながら勉強」は効率が良くない可能性

今回の論文でも明らかなように、私たちの脳はマルチタスクにはあまり適していないようです。以前nounowで取り上げたとおり、いわゆる「歩きスマホ」は危険とされます(歩きスマホは脳科学からみても危険である)。特に高齢者では歩きスマホ中に歩行も操作も上手に行えなくなることが東北大の研究で示されています。

「ながら勉強」もマルチタスクは言語への反応や理解が低下する可能性があることから、あまり効率は良くないようです。

ご紹介した論文
Neural mechanisms for integrating consecutive and interleaved natural events.
Lahnakoski JM et al. Hum Brain Mapp. 2017 Apr 5. doi: 10.1002/hbm.23591.