脳に刻まれた恐怖を消す方法

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

以前nounowでも取り上げた、恐怖記憶を曝露療法ではなくDecNef法により無意識のうちに消す研究についてご紹介します。

曝露療法とは

私たちは無数の不安や恐怖を脳に抱えています。

それは怖い上司だったり、株価だったり、いろいろですが、よくよく考えてみればその多くは学習された恐怖や不安だったりします。

パブロフの犬ではベルの音とお肉の組み合わせを繰り返し続けていくと、ベルの音を見ただけでもヨダレが出るようになりますが、
これは不安や恐怖とも同じような仕組みで与えることができるようで
上司に会うたびに怒鳴り声という音声刺激を与えられていくと、自然と上司の顔を見ただけで肩がすくんだりする恐怖反応が出るようになってしまいます。

こういった恐怖反応も度をすぎると日常生活に齟齬を来してしまうのですが、これに対処する方法として曝露療法というものがあります。

これは恐怖の対象になる刺激を避けるのではなく、あえて恐怖の対象と対峙して、それに徐々に慣れていくことで脳の反応を変えていくアプローチなのですが、これはやってみると、実際の恐怖対象と向き合うというハードルの高さもあり難しいところもあるようです。

このハードルの高さを下げるには、恐怖の対象を意識することなく脳の反応を変えられればよいのですが、果たしてそのようなことは可能なのでしょうか。

無意識に恐怖反応を減らすニューロフィードバック技術

今回取り上げる論文は、ニューロフィードバックを用いて無意識のうちに恐怖対象への反応を減弱させる方法についてのものになります(DecNef法)。

実験では

①被験者に二色の幾何模様を見せ、電気刺激を同時に与えて恐怖学習をさせる.
②二色の幾何模様を見ている時の視覚野の脳活動パターンを機能的MRIで読みとる
③二色の内、一色の視覚野の脳活動パターンを自発的に出せたら、金銭を与えるというフィードバック学習を行う

という方法で行っています。

いまいちイメージがつかみにくいのですが、

①怖い上司の顔を見ている時の脳活動を読み取る
②怖い上司の顔は見せないけど,それと同じ脳活動を引き起こせたらご褒美を上げる
③その後,怖い上司の顔を見て,恐怖反応が減っているかを確かめる

というような恐怖をご褒美で塗り替えるようなアプローチで、これは実際に恐怖刺激(怖い上司)を見なくても、恐怖反応を減弱できる結果になったようです。

またこの反応は無意識的なようで、曝露療法で見られるような腹内側前頭前野の活動増加が見られず、報酬学習に関わる線条体の活動増加が見られたという点で従来の曝露療法と機序がだいぶ違うようです。

無意識に脳の反応を変えられるとしたらストレスレスでなかなかよいなと思いました。

参考:恐怖記憶を消すニューロフィードバック技術

Fear reduction without fear through reinforcement of neural activity that bypasses conscious exposure
Ai Koizumi, Kaoru Amano, Aurelio Cortese, Kazuhisa Shibata, Wako Yoshida, Ben Seymour, Mitsuo Kawato & Hakwan Lau
Nature Human Behaviour 1, Article number: 0006 (2016)
doi:10.1038/s41562-016-0006
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ExtinctionFear conditioningNeural decoding
Received:
10 May 2016
Accepted:10 October 2016
Published online:21 November 2016
コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション