書くことが癒しになる可能性

工樂真澄

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出典元:pixabay.com

「病は気から」とはよく言ったもので、ちょっとした風邪なら気力だけでいつの間にか回復したりするものです。今回は、過去のつらい出来事ことを書きだすことが、体の回復に及ぼす効果を調べた論文をご紹介します。

書くことで癒される

2017年、ニュージーランドにあるオークランド大学のRobinsonさん(博士課程)らは、過去のつらい出来事を書き出すことが、傷の治り具合に影響することを明らかにしました。

実験には18歳から55歳までの健康な122人が参加しました。被験者には穴を開ける道具を使って、腕の内側に4ミリメートルほどの小さな傷をつくってもらいます。被験者はあらかじめ4つのグループに分けられており、このうち2つのグループには今までの人生で最も嫌だった思い出や、トラウマになっていることについての心情を書いてもらいました。できるだけ、今まで誰にも打ち明けられなかったような出来事について、書いてもらうようにしました。2つのグループのうち、一つ目のグループには腕に傷をつける前に書いてもらいました。二つ目のグループには傷をつけた後に書いてもらいました。4つのうち残りの2つのグループには、日常に起こった出来事や中立な内容の文章を自分の心情を交えず、書いてもらいました。

傷をつけてから10日後、傷の治り具合を各グループ間で比較しました。その結果、傷をつける前につらかった出来事について心情を書き出したグループでは52パーセントの人の傷口がふさいでいたのに対して、傷をつけた後で書いたグループでは27パーセントの人しか治っていませんでした。また、感情を含まず中立的なことを傷をつける前、傷をつけた後に書いたグループでは、治った人はそれぞれ15パーセント、23パーセントにとどまりました。

この結果より、過去のつらい思い出を書き出すことで、その後に受ける体の傷が治りやすくなる可能性があることがわかりました。

心と体は密接に関係している

心情を書き出すことで、その後にできた傷の治りが早くなる理由として、論文では次のように推論しています。

過去のつらい出来事を書くことは、それ事態がたいへんなストレスになります。そのため傷を受けた後では、余計なストレスを加えることになり、傷が治りにくい原因になると考えられます。その一方で、書くことは事実を整理し、自分の気持ちと折り合いをつける助けにもなります。そのため、今まで縛られていた感情から解放されることでストレスが軽減し、その後に受けた傷の回復にも良い影響が出るのではないかと考えられます。

書くことで治癒力を上げる

以前、書道の記事でも取り上げましたが(書道でストレス解消! 軽度認知症改善にも効果あり!)、書くことは瞑想に似た効果を示し、ストレスを軽減する効果があるようです。

今回ご紹介した研究のように、過去のつらい思い出について書くことは、客観的にその出来事を見たり、自分の気持ちを整理したりする助けになると考えられます。今後は、長期間病気で苦しんでいる人などを対象に、日記を定期的に書いたりすることで、薬の効果がどのように変わるかなどの研究に期待がかかります。

ご紹介した論文
The effects of expressive writing before or after punch biopsy on wound healing.
Robinson H et al. Brain Behav Immun. 2