なぜ幸せになるのが怖いのか?

佐藤洋平

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出典元:pixabay.com

「幸せすぎて怖い」、、ドラマにでてきそうなセリフですが、幸せを怖がる脳活動を明らかにした研究をご紹介します。

幸福恐怖症

世の中には幸せになることを恐怖するという幸福恐怖症という言葉があるそうですが、そこまでいかなくも元気が無いときには大きなチャンスがやってきても、まるっきり気が惹かれないということがあります。これはいったいなぜなのでしょうか。

今回取り上げる論文はうつ病患者がなぜ幸せになることに対して消極的になるのかを調べたものです。

実験では未治療の大うつ病患者と一度もうつ症状を経験したことがない成人を対象に、

0ドルの報酬(実質報酬なし)
20セントの報酬/損失
1ドルの報酬/損失
5ドルの報酬/損失

を予測させ、その時の脳活動を機能的MRIを用いて測定しています。

結果を述べると、報酬を予測している時、うつ病患者と健常者は同じように喜びややる気と関連する脳領域(側坐核)の活動が見られ、情動的反応も同じように得られたのですが、

うつ病患者では、報酬可能性が高い時(儲けが出そうな時)、心の葛藤に関係する脳領域である前帯状皮質の活動が増加しており、

これに対して健常者では損失可能性が高い時(損をしそうな時)、心の葛藤に関連する脳領域である前帯状皮質の活動が増加することが示されています。

つまり健常者では損をするかもしれないシチュエーションで心の葛藤が生じ、うつ病患者では得するかもしれないシチュエーションで心の葛藤が生じているということになります。

元気が無いときには、心の奥底では幸せになりたいとう欲動(側坐核の活動)が起こっているものの、不幸になるかもしれないという迷い(前帯状皮質の活動)がフィルターをかけているのかなと思いました。

論文要旨

・背景
大うつ病障害(MDD)の中心的な特徴は、ポジティブなインセンティブに対する反応の低下である。今回の研究では、うつ病患者と一度もうつ症状経験のない対照者の金銭的インセンティブ処理の神経相関を比較した。

・方法
現在のうつ状態にある14人と抑うつをしていない12人を対象に、金銭的インセンティブ遅延課題を行っている時の脳活動をfMRIを使用して測定を行った。タスク中に、参加者は、様々な金額の損失を得るか、または避けるために、迅速に提示された目標を予測し、それに応答するように指示された。

・結果
報酬予測をしている時の側坐核の活動や情動反応,行動反応についてはうつ状態のものとそうでないものの間で有意差は見られなかった。しかし、うつ状態の参加者は、報酬予測をしている時に前帯状皮質活性化の増加を示したのに対し、そうでないものは損失予測をしている時に島皮質活性化の増加を示した。

・結論
今回の研究結果から、大うつ病患者は、肯定的な覚醒を経験し、報酬獲得を予期している間に側坐核の活動を引き起こす能力を有する一方で、同時に葛藤を示す前帯状皮質の活動も増加をも引き起こすことが示された。

Biol Psychiatry. Author manuscript; available in PMC 2008 Apr 8.
Published in final edited form as:
Biol Psychiatry. 2008 Apr 1; 63(7): 686–692.
Published online 2007 Oct 4. doi: 10.1016/j.biopsych.2007.07.023
PMCID: PMC2290738
NIHMSID: NIHMS43217
Neural responses to monetary incentives in major depression
Brian Knutson, Jamil P. Bhanji, Rebecca E. Cooney, Lauren Y. Atlas, and Ian H. Gotlib
The publisher’s final edited version of this article is available at Biol Psychiatry
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コンテンツ提供:脳科学リハビリテーション