小さいころの血圧と脂質が脳年齢と関連する

鈴木邦義(ペンネーム)

child-817368_1920

小児期の高血圧や高コレステロール血症などへの罹患が中年期以降の認知機能低下に関連する可能性が報告された論文をご紹介します。

小児の高血圧・高脂血症

認知症は、基本的に中高年以降に起こる病気であり、小さいころの健康状態と関係しているとは考えていない方も多いでしょう。しかし、小児期において動脈硬化性疾患をもっていると、実は将来的に認知機能が低下しやすくなる可能性があるというデータが、今回示されました。

高血圧や高脂血症の多くは生活習慣病であり、通常は成人後の生活習慣次第で発症するものです。しかし、実は小さい子どもでも高血圧や高脂血症を発症することがあります。ただし、小児期において発症する高血圧症・高脂血症は、成人と比べ遺伝性の割合が高いのが特徴です。また、遺伝性素因のない(非遺伝性の)小児高血圧症・高脂血症のほとんどは小児肥満によりますが、成人同様に内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群、成長ホルモン分泌不全症など)、腎臓病(ネフローゼ症候群など)に合併する場合もあります。

そうした患児においては、小児期でもすでに動脈硬化性の変化があらわれはじめていることはこれまでも報告されたことがあり、動脈硬化症のリスクの高い患児は、小児期からの動脈硬化治療・予防が重要であると言われてきました。しかし、その動脈硬化のリスクがどの程度のレベルで将来的な認知機能の低下に関与してくるかについては、質の高いデータがこれまでありませんでした。

小児期の高血圧や高脂血症が、中年以降の認知機能と関連する

今回、小児期の高血圧や高コレステロール血症が、中年以降の認知機能の低下と関連するとの結果が、Journal of the American College of Cardiology誌に掲載されました。

本研究においては、フィンランド人3596人について、幼少期・青年期・若年成人期の年齢・性別・世帯収入・血圧と脂質異常症の治療薬の服用・心臓病・1型糖尿病と2型糖尿病の発症といったパラメータに関するデータベースを利用し、その中で認知機能検査を受けた1901例について、それらの臨床因子と認知機能低下との関連性を解析しています。

結果としては、小児期・青年期・若年成人期における高血圧と高脂血症(高コレステロール血症)が、中年期以降の認知機能の低下と関連していた、というものです。特に認知機能の中でも、記憶と学習に関しての低下が統計学的に有意であったとしています。さらに、この関連性の強さは青年期と若年成人期の喫煙と変わらない影響度であった、との結果は注目すべき点でしょう。

今回の研究においては、若年時から高血圧が持続している場合、そうでない人と比較して認知機能年齢の差が最大で8.4歳も上であったということです。また、高コレステロール血症の持続については対照群と比較して最大で6.6歳。喫煙による差は最大で3.4歳でした。

成人における心血管危険因子が認知機能と低下していることは周知の事実であるものの、幼少期から血管危険因子を有してることで、将来的にどの程度、中年以降の認知機能低下に影響するかはこれまであまりわかっていませんでした。

高血圧や高コレステロール血症の罹患期間が長ければ、それに応じて動脈硬化が進み、認知機能低下につながるものということが考えられますが、今回の検討を元に、小児期からの心血管危険因子のモニタリングを積極的に行い、必要に応じて正しい時期に介入するための指針を確立していく必要があると考えられます。特に遺伝性素因がある場合や、肥満がある場合、内分泌疾患や腎臓病にかかっている場合には、しっかりと高血圧や高脂血症の管理を行っていくことが将来の認知機能低下を予防することにつながる可能性があります。

ご紹介した報告
Heart disease risks experienced in childhood impact cognition later in life
Donald M. Lloyd-Jones, Norrina B. Allen. Journal of the American College of Cardiology May 09, 2017, 69 (18) 2290-2292