元気な高齢者(Super Ager)は脳がもともと大きい?それとも脳が萎縮しない?

鈴木邦義(ペンネーム)

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以前にもnounowで取り上げた、アメリカのノースウェスタン大学の研究で発表されたスーパーエイジャーに関する論文をご紹介します。

Super Agerとは?

80歳を過ぎても記憶力や体力が50~65歳の頃と変わらないほど元気であり、特にエピソード記憶の検査で高い成績をおさめるような高齢者のことを、Super Ager(スーパーエイジャー)とよびます。

年齢を重ねると知力と体力ともに衰えるものとの常識を覆すような、元気な高齢者Super Ager(スーパーエイジャー)が最近注目されています。人間の記憶を貯蔵する「大脳皮質」は加齢に伴い縮小し、記憶力も低下していくという事が定説となっていますが、80歳を過ぎても50~65歳と同程度の記憶力をもつ、脳科学の分野でスーパーエイジャーといわれる人たちの大脳皮質は、平均に比べて著しく厚いことが先行研究によってわかっています。

脳の最も大きな部分の大脳皮質は、思考から発話、音声、視覚、味覚などの知覚情報の全てをつかさどっています。その大脳皮質は通常、加齢とともに少しずつ萎縮していきます。一般的に40歳位から萎縮が始まり、10年で約5%縮むといわれていますが、アメリカのノースウエスタン大学のCOOK氏らが発表した研究として、一般の高齢者に比べて、スーパーエイジャーは加齢に伴う脳の萎縮率が少ないことが今回の研究で報告されました。

Super Agerは脳の萎縮率が少ない

研究者らは、日常生活が普通に送れる80歳以上の人を対象者とし、認知機能が平均的な高齢者が12例、Super Agerは24例につき解析した。Super Agerは、エピソード記憶の検査において、50-65歳の基準値以上の成績をおさめ、さらにほかの認知機能検査において年齢相応以上の成績をおさめた人と定義しています。また、平均年齢83.3歳で、女性が75%を占めていました。

結果としては以下の通りでした。
認知機能が平均的な高齢者とSuper Agerとの比較において、全脳皮質体積は、観察期間において両群で有意な減少が認められました。そして、年間変化率を比較すると、認知機能が平均的な高齢者においては、2.24%の体積減少を認めたのに対して、Super Agerでは、1.06%の体積減少にとどまったのです。性別、利き手、学歴による補正を行っても、Super Agerでは体積減少率が低いという結果でした。

Super Agerになるためには?

通常、人は、老化と共に記憶が曖昧になり、注意力が散漫になり、新しいことを習得することが困難になります。Super Agerのような人は多くはいませんが、高齢になっても知力や体力を保つためにできる対策はあります。

Super Agerの条件として、生涯チャレンジヤーでいることは大切なことです。自分には少し難しいと思うようなことを行うことは、能力を維持する上で大切なことです。精神的な負担でも、肉体的な負担でもどちらでも構いません。

たとえば今まで弾いたことのない楽器を人前で弾けるようになるなど、普段している事よりも少しだけ難しいことを行うことが効果的である可能性があります。また、定期的に運動をすることが大切で、スポーツや、それが難しい場合はウォーキングでも継続すると効果があります。特に歩行速度が速いと手術後の回復がよいといったデータはしばしば報告があり、とても大切な機能であると言えるでしょう。最も重要なことは、使っていない脳の部分を使うこと、つまり出来るだけ新しいことにチャレンジしていくことです。

今後の研究課題として、
・どの脳の部位が老化によって萎縮しやすいか
・どの脳の部位がそうした萎縮を予防しやすいのか
・どのような活動がこうした予防に効果があるのか
といったことについてのデータが蓄積されることが待たれます。

Super Agerの存在は、加齢によって一律に認知機能が低下するわけではないということを示しています。遺伝的な要因があるかはまだ分かっていませんが、日々の心がけによって認知機能の低下を大きく防ぐことをできるかもしれないのです。

参考:すごい記憶力〜スーパーエイジャーは何が違うのか

ご紹介した論文
Rates of cortical atrophy in adults 80 years and older with superior vs average episodic memory.
Cook AH et al. JAMA. 2017 Apr 4;317(13):1373-1375