記憶を操作する技術

nounow編集部

記憶を消す(イメージ)
出典元:pixabay.com

いずれもマウスによる実験ですが、光遺伝学を利用して、悪い記憶を消して良い記憶を強化したり、記憶を人工的に操作することに成功したとする研究をご紹介します。

悪い記憶の消去法、良い記憶の強化法

Stony Brook University(ストーニーブルック大学)の研究チームは、情動記憶に含まれる信号に使われる神経伝達物質のアセチルコリンを操ることで、「良い記憶を強化したり、悪い記憶を消すこと」に一歩近づいたと発表し、2016年5月Neuron(ニューロン)誌に掲載されました。

アセチルコリンを放出し情動記憶を強化するコリン作動性ニューロンに光をあてて刺激し、マウスにトラウマの記憶を形成させている最中にアセチルコリン放出量を増やすと、恐怖の記憶は大幅に強化されました。その記憶は通常より2倍以上も継続したとのことです。
一方でアセチルコリンを減少させたとき、その記憶を消滅(消去)させることができました。

尚、当研究では光を使った研究法である光遺伝学(オプトジェネティクス)を利用しており、ニューロンは青(または緑)の光を当てると刺激され、黄色(または赤)の光はブロックすることを利用しています。

記憶を人工的に操る技術

富山大学大学院、井ノ口馨教授の研究グループでは、「記憶を人工的に操る」研究が進んでいます。

マウスに「丸い部屋」という記憶と「怖い部屋(足に電流が流れる部屋)」という記憶を植え付けました。
そのマウスの脳にオプトジェネティクスを利用し、脳にある「丸い部屋」と「怖い部屋」の記憶領域を同時に刺激すると「丸い部屋」の記憶が「怖い部屋」の記憶に書き換えられマウスは全く動かなくなりました。

異なる記憶領域を同時に刺激すると、一方を思い出すともう一方を思い出す、2つの記憶が繋がった連合記憶という神経細胞が新しく生まれます。

全く関係のない記憶同士を人工的につなげることに成功したわけです。

PTSDの治療に有効になる可能性

PTSDという疾患があります。PTSDの患者は、大きなトラウマ体験と全く関係のない記憶が結びつくという特徴があります。

井ノ口馨教授の研究では、無関係な記憶同士を人工的に結びつけることに成功しており、この原理を逆に応用し、くっついた記憶を人工的に分離する技術も将来可能になるかもしれません。

またストーニーブルック大学の研究のように悪い記憶を消去することができればトラウマに苦しむ人のトラウマ自体を記憶から消し去ることができるようになるかもしれません。

記憶を操作する技術を人類が手にする日は決して遠くないようです。

http://sb.cc.stonybrook.edu/news/general/2016-05-06-manipulation-of-specific-neurons-helps-to-erase-bad-memories.php

http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp536.html