睡眠中に脳に電気刺激を与えて記憶を強化できる技術

nounow編集部

睡眠中に電気刺激をあたえる(イメージ)
出典元:pixabay.com

人間は睡眠中に記憶を形成しているといわれます。睡眠中のある特定の脳波を標的として電気刺激を与えることで記憶が強化されるとする研究を紹介します。

睡眠時の脳波

睡眠時の脳波は レム睡眠とノンレム睡眠の2つのタイプに分かれます。

レム睡眠はまぶたの下の眼球運動をともなう睡眠で、夢をみている状態。脳を覚醒させる準備の眠りともいえます。

ノンレム睡眠は脳を休ませる眠りで、さらに第一段階から第四段階まで4段階に分かれます。
脳波の振幅が高くて周期の小さい波を徐波といいますが、徐波睡眠はいわゆる熟睡のことです。
レム睡眠とノンレム睡眠は、一晩の睡眠中に約90分周期でくり返し現れます。

睡眠第一段階・・・α波が減少してθ波やβ波が混ざる
睡眠第二段階・・・睡眠紡錘波(spindle)とK複合波(K complex)が出現
睡眠第三段階・・・2Hz以下で頂点間振幅が75μV以上の徐波(δ波)が、20%以上50%未満を占める段階
睡眠第四段階・・・2Hz以下、75μV以上の徐波(δ波)が50%以上を占める

睡眠第二段階に現れる睡眠紡錘波(ぼうすいは)が記憶の形成に関与しているとこれまでいわれてきました。

しかし睡眠紡錘波が記憶の蓄積や固定を可能にするか、あるいはその原因となるのか、もしくは記憶の蓄積を可能にする他の脳活動の副産物なのかもよくわかっていませんでした。

睡眠紡錘波を標的に電気刺激を与える実験

今回、Frohlich Labの研究では、16名の男性を対象に2夜の研究を行いました。

毎晩の就寝前にすべての被験者に2つの一般的な記憶課題、関連語句の組合せテストおよび、特定の順番で繰り返し指を動かす反復タッピング運動課題を実行させ、研究の両夜にわたって、各被験者の頭皮の特定部位に電極を設置しました。

2夜のうち片方の睡眠時には、各人にtACS(Transcranial Alternating Current Stimulation)を施して脳の自然な睡眠紡錘波と同期して変化する弱電流を流し、もう一方の夜にはプラセボとなる偽造刺激を各人に与えました。

結果、刺激を与えた夜はプラセボの夜と比較して、関連語句の組合せについてのテストの点数においては改善がみられませんでしたが、運動課題においては顕著な向上がありました。

当研究の筆頭著者であるFröhlich Labの博士研究員Caroline Lustenberger曰く

「このことは、睡眠紡錘波の電気的活動パターンと運動記憶の固定プロセスとの間の、直接的な因果関係を示しています」

「今回の研究結果に関して私たちが興奮しているのは、統合失調症やアルツハイマー病のような多くの疾患において、記憶形成に加え、睡眠紡錘波が正常機能していないことがわかっているからです」

「これらの睡眠紡錘波を標的とすることが、記憶障害や認知障害に関する新たなタイプの治療法となりうると私たちは考えています」

とのことです。

人間の能力拡張テクノロジーの進化

どの皮質が記憶形成に関与しているかもはっきりしておらずまだまだ研究はこれからの段階のようですが 睡眠紡錘波を標的として微弱な電流を流し 記憶障害の治療が可能になれば素晴らしいですね。

また仮に睡眠紡錘波が様々な運動の記憶と結びついているとして、tACSによって記憶力が強化されるならスポーツマンのパフォーマンス向上につながるかもしれません。

以前nounowで取り上げた tDCSによる脳ドーピング(2020年東京オリンピックでは「脳ドーピング」が問題に!?)もそうですが 脳科学の進化によって人間の能力を拡張するテクノロジーが続々とうまれはじめているようです。

出典:Electric brain stimulation during sleep found to enhance motor memory consolidation(Kurzweil accelerating intelligence)