連敗が続くアルツハイマー病治療薬〜米メルク、アルツハイマー病治療薬の一部研究打ち切り

nounow編集部

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出典元:pixabay.com

21世紀の人類の脅威、アルツハイマー病。その原因物質とされるアミロイドベータの蓄積を抑制する治療薬が注目されていましたが、メルク社が開発を一部ストップすると発表しました。

期待されていたベルベゼスタット

米製薬大手メルクは今月14日、アルツハイマー型認知症治療薬「ベルベセスタット」の臨床試験を一部打ち切ることを発表しました。

出典:Bloomberg 2017.2.15 米メルク、アルツハイマー病治療薬の一部研究打ち切り-軽・中度対象

昨年11月ごろ、米国の研究者らが、臨床試験段階にあるベルベゼスタットを使用した新薬について、有害な副作用が認められず、薬剤として期待が持てるとする論文を発表していました。

アルツハイマー病治療薬には様々なアプローチがありますが、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドベータをアミロイドβ前駆体たんぱく質(APP)から切り出す「βセクレターゼ」という酵素(BACE1)の働きを阻害することでアミロイドベータの濃度を下げるという手法があります。

今回のメルク社のベルベセスタットはこのアプローチの薬で、3000人以上の患者が実験に参加して臨床試験が進められていましたが、専門家から成る独立した委員会が「プラスの臨床効果を見いだすチャンスは実質ない」と判断したとのことです。

一方、アルツハイマー病の前駆症状に対するベルベセスタットの臨床試験は、安全性上の大きな問題はなかったと同委員会が結論付けたこともあり、続行するとも発表しています。

連敗が続くアルツハイマー病治療薬

アルツハイマー病治療薬の他の手法としては、アミロイドベータの蓄積を防ぐ「抗アミロイドβ抗体」があります。

これはアミロイドベータを標的とする抗体を投与すると抗体が老人斑に集まり、それを目印に集まる脳の掃除係であるミクログリアがアミロイドベータを除去するという方法です。

これまで多くの抗アミロイドβ抗体がつくられ、研究が続けられていますが、現段階で臨床試験の最終段階をクリアしたものは1つもありません。

米イーライリリー社、初期アルツハイマー病治療薬の製品化を断念

昨年11月には 米イーライリリー社が、初期のアルツハイマー型認知症新薬「ソラネズマブ」の臨床試験で有効な結果が得られなかったと発表し、製品化を断念しましたが、このソラネズマブは抗アミロイドβ抗体です。

期待されていたソラネズマブに続いてベルベセスタットも開発中止とアルツハイマー病治療薬は連敗が続いています。

様々な手法のアルツハイマー病治療薬

一方で、抗アミロイドβ抗体の「アデュカヌマブ」が、昨年8月良い結果が発表されており、期待が集まります。
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メルク社のベルベセスタットのようなβセクレターゼ酵素阻害剤では他に、アストラゼネカ社とイーライリリー社が共同で開発する「AZD3293」があり、第3フェーズの臨床試験がスタートすることが昨年発表されています。
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また、アミロイドベータの分解を促進するという手法があります。

理化学研究所の西道博士が発見した「ネプリライシン」というアミロイドベータを分解するたんぱく質を刺激する薬、ネプリライシンの働きを促進する「ソマトスタチン」という視床下部から分泌されるホルモンの受容体を刺激する薬などです。

それら以外にも、ニューロン内のタウの凝集を阻害する薬、ミクログリアの機能を調整する薬など様々なアプローチがあり、アルツハイマー病を克服する可能性はまだまだ残されています。

参考文献:Newton2017年3月号「アルツハイマー病研究最前線」