脳トレ「Nバック課題」と知能向上

nounow編集部

思い出すしぐさ(イメージ)
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いくつかの研究で脳トレ「Nバック課題」によってワーキングメモリだけでなく流動性知能も向上することが示されています。しかし懐疑的な見方も存在し議論はまだ途中、決着はついていません。知能の向上を目指すだけでなく認知症予防につなげる研究も期待されます。

脳トレ「Nバック課題」とは?

Nバック課題とは「一連の刺激を順番に呈示され 現在呈示されている刺激がN回前の刺激と同じであれば反応する」課題のことです。例えば、いくつかの文字が読み上げられるのを聞き、同じ文字が2回続けて読み上げられたときに反応するのが1バック。3回前に読み上げられた文字と同じときに反応するのが3バックです。

A B A A B A ・・・なら 4番目のAで反応するのが1バック(1つ前がAなので)、3番目と6番目のAで反応するのが2バック(2つ前がAなので)、6番目のAで反応するのが5バック(5つ前がAなので)です。実際やってみるとわかりますが次々と文字が読み上げられるので全神経を集中しないとわからなくなってしまい、非常に脳が疲れます。

これよりさらに難しいのが「二重Nバック課題」。2つの別々の刺激(視覚情報と聴覚情報)が同時に呈示されNバック課題を行うものでさらに疲れます。

Nバック課題で流動性知能が向上?

nounowの記事「脳トレで流動性知能は向上する?」でもとりあげた2008年のスイスの研究者ヤーキとブッシュクールの研究発表によると、二重Nバック課題のトレーニングによって被験者の流動性知能が向上しました。※流動性知能・・・新たなことを学んだり解決する力全般

また2011年、ミシガン大学の研究で、デトロイト地域に住む初等および中等学校の子供数十人に、Nバック課題のトレーニングを1日15分間受けさせたところ、一般的な知能テストの一種において、多くの子供が大幅な成績の向上を示しました。また多くの子供でトレーニングをやめた後も、流動性知能の向上効果が3カ月持続しました。

ワーキングメモリーと注意力は流動性知能と密接に関連しているとされます。Nバック課題は、課題遂行に必要な情報を一時的に保持するワーキングメモリーを鍛えるだけでなく、今必要な情報に意識を集中する注意力を強化し、その結果流動性知能が向上するということのようです。

知能の向上と身長

ミシガン大学研究論文の主著者であるジョニデス教授曰く

知能の向上は身長に似ているところが大きい。人の身長は、大きくは両親の身長(遺伝)によって決まることがわかっている。しかし、背の高さには栄養状態も影響力を持つ。おそらくNバック課題は適切な精神的栄養のひとつなのだ。
(引用)wired.jp/2011/06/23

これまで流動性知能は遺伝で決まり、向上させることはできないといわれてきました。しかし身長における栄養状態同様に、Nバック課題などのトレーニングによって一定程度影響は与えうると多くの研究者が考えはじめています。そして普通の人が天才になれる!とまではいかないにしてもトレーニングによって一定程度知能を向上させたエビデンスが集まりつつあります。

続く脳トレ論争と今後の期待

未だ論争が続いている分野であり現時点で明確に「流動性知能は脳トレ(Nバック課題)により向上する」とは言い切れません。また、そもそも人間の「知能」や「能力」をまだ我々は完全には測定できません。ワーキングメモリーと注意力が向上したことによって実生活でどのくらい恩恵をうけるのか?例えば仕事で大きな成果をあげて年収があがるのか?そもそも仕事や学業、芸術などで成果をあげる能力とは何なのか?など未解明な点が多く、流動性知能を脳トレで向上させる研究にどれほどの意味があるのかと批判する懐疑派もいるようです。

さらには人工知能が進化する未来、少々人間が知能を向上させても人工知能からみると誤差の範囲でしかありません。人間に残る仕事は何で、人工知能より当面優位にたてる能力とは何か?から逆算して鍛えるべき知能を再定義する必要があるでしょう。

しかしヤーキとブッシュクールの研究発表からまだ8年。これからさらに脳トレが知能に与える影響について、知能自体についてやその測定方法について研究は進むでしょう。Nバック課題によって知能向上を目指す方向だけでなく、「攻撃は最大の防御」で認知機能を維持し認知症を予防する研究の進展にも期待したいと思います。