脳トレで認知症を予防できるか

鈴木邦義(ペンネーム)

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認知機能低下の予防を目的とした脳トレなどの有用性について調査した、全米科学・技術・医学アカデミーから発信された報告書、NAS reportについての概要をご紹介します。

脳の機能と脳トレ

近年、脳トレがブームになっています。テレビ、本や雑誌、ゲームにおいていろいろな脳トレ方法が開発され、盛んに取り組まれています。

たとえばパズル、計算問題、読み書きの問題、麻雀・囲碁・将棋・オセロなどのゲームや、運動や体操といった体を使う脳トレ、コミュニケーションを主体とした脳トレなど、例を挙げればきりがありません。また、脳にはいろいろな機能があります。たとえば、記憶する、認識する、計算する、読む、書く、話す、道具を使う、判断するなど多種多様な機能が備わっています。

今回は、そのような脳トレ(認知機能トレーニング)を始めとした、認知症予防を行った場合、介入効果があるかどうかについてまとめた報告が出ましたのでご紹介致します。

脳トレ・高血圧管理・運動の認知機能低下予防効果

今回は、NAS reportという、全米科学・技術・医学アカデミーから発信された報告書について概要をご紹介致します。今回の報告書では、認知症や認知機能低下を予防する目的で一般的に行われている「認知機能トレーニング」「血圧管理」「運動」を行うことで、それらの予防効果があるか、その科学的根拠はどうかといった観点でまとめられています。

・認知機能トレーニングの認知症予防の有用性の調査結果
健康に特に問題のないという高齢者に、認知機能が低下することを遅らせることを目的とした認知機能トレーニングの有効性を検討した研究(ACTIVE trial)をはじめとして、認知機能トレーニングは全体として有望であるという結果が集積されつつあります。ただし、異なる認知機能トレーニング法やその技術について、相対的にどれが有用であるかについて結論付けるまでには至らなかった、とのことです。

・高血圧患者への血圧管理とアルツハイマー型認知症への有効性
認知症は動脈硬化と深く関わる疾患であるため、血圧管理が認知症予防に重要なのではないかとする報告は多数あります。しかし、高血圧領域における各臨床試験において、アルツハイマー型認知症予防のための降圧療法を強く勧められているわけではありません。

今回の報告書においては、前向き観察研究や、高血圧の病態生理から考えれば、高血圧患者に対して降圧管理を行うことは、認知症および認知機能低下のリスクを下げる可能性はあるものの、特に中年期における血圧管理がその後のアルツハイマー型認知症を予防できるかについて、科学的に明確であると結論付けられるほどではないという内容でした。

・運動による認知症予防効果
適度な運動が健康に良い影響を与えることはよく知られており、年齢を重ねることによる認知機能低下リスクを軽減させる可能性を示すエビデンスも集積しつつあります。ただし、軽度認知機能障害(MCI)やアルツハイマー型認知症の予防において、運動することが効果的かどうかを示すエビデンスは未だ十分であるとはいえません。

また、どのような運動が認知機能低下や認知症の予防に有効かを判断するための十分なエビデンスも見いだすことはできなかったという結論でした。

・その他の介入
今回、アルツハイマー型認知症およびMCI予防や進行を抑制することを目的とした計13種の介入を検討したものの、今回特筆された3種(認知機能トレーニング、血圧管理、運動)以外の項目については、「ほとんどが有効性を裏付けるエビデンスがなかった」としています。

脳トレで認知症は予防できるのか

今回の報告では、残念ながら、科学的根拠をもって強く勧められるほどの認知症予防法は現時点ではないとの結論でした。しかし、まだエビデンス(データ)が少ないため、そのような結論になるのは仕方のないことであり、今後データが蓄積されれば、結果が変わってくる可能性は十分考えられます。特に脳トレは、13種類のうち有望な3つのうちの1つに入っていますので、今後もより効果の高い方法を追求していくことで、認知症予防に有用な手法が確立する可能性はあるでしょう。

ご紹介した報告
NAS report: Promising but inconclusive evidence on interventions to prevent cognitive decline, dementia
National Institutes of Health, news releases, June 22, 2017