脳トレゲームによる認知症予防効果に関する研究

工樂真澄

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nounowではこれまでにも、コンピュータを活用した脳トレによる認知症予防の研究をいくつかご紹介してきました。それぞれの研究は手法や対象が異なることもあり、その効果の有無は一概には断言することはできません。今回ご紹介する論文は、脳トレによる認知症発症の予防効果を10年にわたって調べたものです。

コンピューターを使った処理速度向上の脳トレで発症リスクが低下

アメリカ、南フロリダ大学のEdwards博士らのグループは、コンピュータを活用した脳トレの効果を10年にわたって調べ、2017年に発表しました。(尚、この研究は昨年学会で発表され話題になりました。 ある特定の脳トレが認知症リスクを軽減する

参加したのは65歳以上の健康な2802人です。試験開始時の平均年齢は74歳です。被験者は4つのグループに分けられ、そのうち3つのグループの人たちには、異なる脳トレを行ってもらいました。一つ目のグループが行ったのは「記憶」に関するトレーニングで、言葉によるエピソード記憶の強化に特化したものです。二つ目は「理由付け」に関するトレーニングを行うグループで、問題解決や関係性のパターンを訓練しました。そして三つ目のグループは、コンピューターを使って処理速度の向上を目指すトレーニングを行いました。これは視覚を使った訓練で、画面上に出てくる複数の物の中から、目的の物を探し出すというものです。例えば目的の物が「トラック」だとすると、画面にはバスや、自動車などの紛らわしい物も一緒に現れます。正解するごとに次の課題を解く時間が短くなるように設定されています。四つ目は対照グループで、脳トレを特には行いませんでした。

トレーニングは1回1時間ほどで、最初の約6週間に10回行われました。さらに11か月後に4回、35カ月後に4回のトレーニングの機会が設けられましたが、これらに参加するかどうかは被験者自身が決めました。トレーニング期間に入る前と開始から1年後、2年後、3年後、5年後、さらに10年後に認知機能の測定を行い、認知症を発症していないかどうかを診断しました。

10年の試験期間中に認知症を発症した被験者は260人でした。結果を解析したところ、「記憶」と「理由付け」のトレーニングを受けたグループと対照グループとでは、認知症発症のリスクに差がありませんでした。これに対して、コンピューターによるトレーニングを受けたグループは発症リスクが有意に低いことがわかりました。対照グループと比べた場合、29パーセントも発症リスクが低くなっていました。

コンピューターによるトレーニングを受けた人について、さらに詳細な解析を行ったところ、トレーニングを受けた回数が多かった人ほど、認知症発症リスクは低くなることがわかりました。以上の結果から、健康な高齢者がコンピューターを使った処理速度向上のトレーニングを行うと、何も行わない場合よりも認知症発症のリスクが低くなることがわかりました。また、長期にわたって何度かトレーニングするほうが、効果が高いことも明らかになりました。

少しでも発症リスクを下げるために積極的に予防に取り組む

今回の研究はコンピュータを活用した脳トレの効果を10年にわたって調べたものです。このように人の研究では、検証に長い期間がかかることがわかります。認知症の特効薬がない現在では、より確からしい予防方法を実践することが、認知症で悩む人を減らすための最善の方法でしょう。食生活や運動習慣の改善はもちろんのこと、論文で行われたようなコンピューターを使った脳トレを試す価値は十分にあるのではないでしょうか。

ご紹介した論文
Speed of processing training results in lower risk of dementia.
Jerri D. Edwards et al., Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions Published online: November 7, 2017